「実空間で感じる大きさ」と「写真で見た大きさ」の違いとは
「インスタ映え」する写真がなかなか撮れない?
素晴らしい景色を見たら、写真を撮って、その感動をインスタグラムなどのSNSで共有したいと思う人は多いでしょう。でも、例えば雄大な山を撮影しても、写真で見るととても小さく写って迫力が伝わらず、がっかりしたといった経験をしたことはありませんか? これは、「実空間で物体を見た時に感じる大きさ」と「写真で見た時に感じる大きさ」には違いがあるからなのです。このような差が生じることから見えてくるのが視覚の情報処理の特徴であり、例えばこのようなことを研究するのが視覚情報処理学です。
脳の仕組みを映像技術に適用する
客観的な大きさを記録している写真は、私たちが実際に見ている世界と同じではありません。これは、人には遠くのモノを大きく感じるという脳の癖があるからです。ということは、脳の中でどのような処理が行われているのかがわかれば、それを映像技術に応用することで、写真や映像を実際の見え方に近づけることが可能です。これが実現すれば、よりリアルな感覚を楽しめるようになり、エンターテインメント分野での発展が期待できます。また実用的な応用としては、例えばカメラによる遠隔操作や乗り物のシミュレーターがあります。モニターに映る映像と自分の感覚の差が縮まれば、事故の防止やより的確な訓練にもつながるでしょう。
「視覚」から脳の仕組みを解き明かす
遠くのモノだけでなく、近くのモノもどうすれば実際の印象に近づけることができるかといった研究も進んでいます。人間は近くのモノを180度近い視野で広がりをもって見ています。一方、遠くのモノは大きく見えています。この3次元の見え方を2次元の写真や映像に再現することができれば、より実感に即したものになります。また、物を見ているときの脳波についても研究することで、より脳に関する理解が深まります。
人間を理解するためには脳の構造や仕組みを理解することが必要ですが、それには視覚の研究からもアプローチすることができるのです。
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先生情報 / 大学情報
山口大学 工学部 知能情報工学科 准教授 長 篤志 先生
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