講義No.12497 医学

自分の思う通りに体が動かせない神経難病を解明せよ!

自分の思う通りに体が動かせない神経難病を解明せよ!

筋肉が思うように動かせない病気

ある朝起きたら手足に力が入らない、手を強く握り締めるとスムーズに開くことができないといった症状は、「周期性四肢麻痺」という神経難病の可能性があります。私たちが体を動かそうとする際は、自分の意思を電気信号にして神経から筋肉に伝えています。電気信号に従って筋肉が収縮すれば力を調節できるのですが、そこがうまく機能しないと、思うように体を動かすことができないのです。

「イオンチャネル」の異常

このような症状の患者さんの遺伝子を解析すると、「イオンチャネル」に異常が見つかることがあります。イオンチャネルとは、細胞の膜にある「イオンの通り道」であり、神経の情報伝達や筋肉収縮の調整に重要な働きをつかさどっているたんぱく質です。このような症状があり、もし病院での検査で筋肉の電気的な活動に異常が見つかった場合には、その患者さんの遺伝子に異常があるかを調べます。さらにその遺伝子の変化がたんぱく質の働きに本当に異常を起こしているかどうかを調べる必要があります。解析には患者さんから細胞を取ってきて使うのではなく、培養細胞に患者と同じ遺伝子変化があるたんぱく質を作らせて、その細胞で電気的な活動を記録します。

「パッチクランプ法」を応用する

電気的な活動の解析には、イオンチャネルの挙動を解析するために広く使われている「パッチクランプ法」を用います。細いガラス管の電極で1つの培養細胞に穴をあけ、細胞と電極が一体になった状態をつくり出して細胞の電気的な活動を測るものです。細胞に穴をあけるのは非常に緻密な作業のため、顕微鏡を覗(のぞ)きながら慎重に行う必要がありますし、電極の作成にも細かな調整が必要です。
これまでパッチクランプ法は基礎的な研究で使われていましたが、遺伝子解析の技術が進んだこともあり、近年では患者の病気の解析にも使われるようになりました。それにより、これまでは不明だった症状の原因がわかるようになり、治療法の研究が進むことも期待されています。

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大阪大学 医学部 保健学科 検査技術科学専攻 教授 髙橋 正紀 先生

大阪大学 医学部 保健学科 検査技術科学専攻 教授 髙橋 正紀 先生

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医学、生物物理学、神経生理学

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メッセージ

今はインターネットの時代で、コロナ禍の影響もあり、リアルに何かを見る機会が減っているように思えます。ですが、やはり実際に目で見ることのインパクトは大きなものです。私も大学で偶然見た実験が将来の方向性を決めることになりました。研究でも、実際に患者さんを目の前にすると、なんとかしなければという気持ちになります。だからこそ、困難な研究でも進めていくことができると思うのです。
あなたも何かに興味を持ったら、インターネットで調べるだけなく、実際に見て体験する機会をつくってみてください。

先生への質問

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自由な学風と進取の精神が伝統である大阪大学は、学術研究でも生命科学をはじめ各分野で多くの研究者が世界を舞台に活躍、阪大の名を高めています。その理由は、モットーである「地域に生き世界に伸びる」を忠実に実践してきたからです。阪大の特色は、この理念に全てが集約されています。また、大阪大学は、常に発展し続ける大学です。新たな試みに果敢に挑戦し、異質なものを迎え入れ、脱皮を繰り返すみずみずしい息吹がキャンパスに満ち溢れています。