iPS細胞で進む、神経難病の原因解明と薬の探索

iPS細胞を使って生体内をのぞく
iPS細胞は、再生医療の実現に向けて研究が進んでいます。その一方で、さまざまな細胞に分化できるという幹細胞ならではの機能を「生体内をのぞくツール」として活用することで、病気が起こる仕組みの解明や創薬研究にも役立てられています。
パーキンソン病は、脳の神経細胞に異常が起こる神経難病です。病気になるときに脳の中の細胞でどんな現象が起こっているのか、これまでは知る術が限られていました。しかし、患者由来のiPS細胞から神経細胞や免疫細胞を作り出すことで、脳の中で起こっている現象を試験管(in vitro)の中で再現して、リアルタイムで観察できるようになったのです。
分子レベルで難病のメカニズムに迫る
パーキンソン病は、LRRK2という遺伝子の異常が一因となって起こることが、これまでの研究で明らかになっています。しかし病気が起こる仕組みにはさまざまな分子が関わっていて、まだメカニズムを完全には解明できていません。
それでも、神経細胞に間接的に働いている免疫細胞が発病の重要なファクターになっているという報告もあります。免疫は本来であれば体を守るために働きますが、何らかの異常が起こって自分の体を攻撃し、病気の原因になることがあるのです。神経と免疫の複雑な関わりに迫る研究は世界的な競争段階にあり、難病の仕組みを解明するカギとなるでしょう。
病気の解明から、薬の開発へ
研究では、iPS細胞による疾患モデリングで病気の仕組みを解明しながら薬の探索も行います。病気に関わっている分子を発見したら、それを標的としてさまざまな化合物を網羅的に試し、薬の候補となる化合物を見つけ出すのです。コツコツとした作業ですが、パーキンソン病に効くある治療薬は、標的となる分子を変えることで筋萎縮性側索硬化症の治療薬にもなります。またLRRK2遺伝子はがんや自己免疫疾患、炎症性腸疾患などに関与することがわかっています。パーキンソン病の解明から、幅広い疾患の解明と治療につながっていくはずです。
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