スポーツも熱中症も解決? 炭酸泉が体に及ぼす不思議な力
なぜウォーミングアップするの?
スポーツをする人は、大抵しっかりウォーミングアップしてから競技に臨みます。では、なぜウォーミングアップをするのでしょうか。ウォーミングアップの効果は、ケガの予防や体を温める以外にも筋肉への血流量を増やして最適なパフォーマンスを引き出すために行うと言われています。実は、体を温めて血流量を増やすだけなら、もっと効果的で効率の良い方法があります。それは、炭酸泉に入るのです。炭酸泉を利用すれば、スポーツ選手のウォーミングアップやクールダウンにも応用できる可能性があります。
温水・冷水、どちらも同じ効果が
炭酸泉とは二酸化炭素が溶け込んでいる温泉のことで、日本各地に天然の炭酸泉があります。ただし、高濃度に二酸化炭素が溶け込んでいる高濃度炭酸泉はあまり多くありません。最近ではスーパー銭湯に行ば高濃度炭酸泉があります。炭酸泉に入ると、皮膚の血管が拡張されて血行が良くなります。しかもぬるま湯でも水でも、その効果がみられます。また足湯のように、足首だけでも効果があります。体に負担をかけずに血行改善の効果が認められているので、リハビリ施設や病院でも利用されています。ところが、なぜ炭酸泉で血管が拡張するのか、詳しいメカニズムはまだ解明されていません。その効果のみが知られ、広く利用されているのです。
熱中症対策にも
炭酸泉は、熱中症に強い体づくりにも役立つ可能性があります。そもそも熱中症とは、体の熱を汗によって逃がすことができず、そのまま体温が上昇して引き起こされる症状です。そのため汗をかける体にしておくことが大切なのですが、人は年を重ねると汗をかきにくい体になります。しかし、だからといって体を動かすことが難しい高齢者には運動は勧められません。そこで炭酸入浴剤を使った風呂に毎日入ったり、手や足を入れたりすることで、血管運動を活発にしてだんだん汗をかける体にし、体温を下げられるようになれば、熱中症リスクも下がるでしょう。健康で強い体をつくっていくことに炭酸泉が貢献するのです。
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日本福祉大学 スポーツ科学部 スポーツ科学科 教授 西村 直記 先生
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