医療や介護の未来を変える「スマートライフケア」
超高齢社会の問題に挑む
超高齢社会を迎えた日本では、2030年には1人の高齢者を約1.8人で支えるという試算が出ています。介護職不足や医療費の増大は深刻な問題です。これらの問題を解決しようと、在宅医療やリハビリテーション、要介護状態になる前の予防に貢献する情報通信技術(ICT)やロボット技術の研究が進んでいます。
ICTはQOLを高める切り札
在宅医療の場合、医師が高齢者や認知症の患者さんから、記憶を頼りに、薬を飲んだ時間や体調の変化を聞き出すことは難しいものです。そこで、モニタリング機器を使って患者さんの様子を記録し、適切な治療やリハビリ、薬の処方につなげようとソフトウェアが開発されています。MedictomeというWebアプリケーションとiPostureというカメラと重心動揺計からなる計測装置を組み合わせて、パーキンソン病の患者さんの姿勢や運動の様子を記録することにより、効果的なリハビリ方法の検討に生かされています。
また高齢者や難病の患者さんは、社会との接点が少なくなりがちです。Skypeなどのインターネット電話サービスを使えば、外出しなくても顔を見ながら会話ができますし、仕事のスキルをインターネット上に登録すれば、雇用にもつながるでしょう。低コストのICTは、高齢者や難病の患者さんのQOL(生活の質)を高める切り札になるのです。
生活支援ロボットで快適な暮らしを
生活を支援するロボットも研究されています。例えば、一人で衣服を着替えるのが難しい人の手伝いをするロボットが開発されました。人間がロボットの腕を動かして介助の動きを学習させると、ロボットは人工知能で試行錯誤を繰り返しながら、体型や姿勢、衣服の素材など環境の違いをセンサで計測し、うまく力を制御して着替えを手伝うことができるようになるのです。
医療や介護は、一人ひとり状況が異なるので難しい面もありますが、ICTやロボット技術を活用した「スマートライフケア」は、超高齢社会を人間らしく快適に暮らすための可能性に満ちているのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
九州工業大学 大学院生命体工学研究科 人間知能システム工学専攻 教授 柴田 智広 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
知能ロボティクス、リハビリ科学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?