オキシダントによる大気汚染から日本を守る

オキシダントによる大気汚染から日本を守る

汚れた大気の国籍を探れ

日本で大気汚染が騒がれたのは、1970年代のことです。自動車や工場から大量に汚染物質が出され、全国各地で光化学スモッグなどが起こりました。その後日本では対策が徹底され、国内では汚染の元になる物質が排出されることはまずなくなりました。
ところが、いまだに日本の大気はきれいになっていません。なぜなら、大気には国境がないからです。いくら日本国内で汚染物質を出さないよう努力しても、ほかの地域からいくらでも飛んできます。排出源を突き止めて、元からシャットアウトしない限り、日本の大気汚染は解消されないのです。

日本だけでは解決できない日本の大気汚染

では日本に飛んでくる汚染物質は、どこで出されているのでしょうか。それは隣の中国からだろう、とは単純に言えないのが大気汚染の難しいところです。そもそも汚染物質は風に乗って日本に運ばれてきます。日本に向かって吹く風は基本的に偏西風で、風は西から吹いてきます。
確かに中国は日本から見て西に位置していますが、その中国にも風は西から吹いてきます。結局、風は地球全体をぐるぐるまわるように吹いているので、汚染物質の元をたどるとヨーロッパから、はるか彼方のアメリカにまで行き着く可能性もあるのです。

複合的な要素をいかに解きほぐして計算するか

汚染物質には寿命があります。いったん風に乗っても、すぐに落下してしまう物質はほとんど環境に影響ありません。問題は一度風に乗って飛ぶとなかなか落ちない物質で、その代表といえるのがオキシダントです。
濃度が高いと人間に対する急性毒性や、植物に対する成長阻害を引き起こすオキシダントの発生源はどこなのでしょうか。人為的には窒素酸化物や炭化水素から出てきます。また炭化水素起源のオキシダントは森林からも出ています。複合的な要因が絡み合っているため、オキシダントの発生源を突き止めるのは至難の業ですが、問題解決には欠かせない課題として研究が進められているのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

大阪大学 工学部 環境・エネルギー工学科 環境工学科目 教授 近藤 明 先生

大阪大学 工学部 環境・エネルギー工学科 環境工学科目 教授 近藤 明 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

環境工学、エネルギー工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

水は、なぜ低い方へ流れるのか不思議に思ったことはありませんか? 高いところから低い方へ、確かに水は当たり前のように流れます。その理由が重力にあることも知っているでしょう。これは単純な例ですが、科学の原点は、こうした日常の現象に目を向けることに意義があります。何かが変化しているのなら必ず原因があるはずで、それが因果関係と言えます。どんなささいなことでも構いません。何かに「あれっ?」と思ったなら、そのままやり過ごさずに、変化の裏に潜む因果関係について考える習慣を付けてください。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

大阪大学に関心を持ったあなたは

自由な学風と進取の精神が伝統である大阪大学は、学術研究でも生命科学をはじめ各分野で多くの研究者が世界を舞台に活躍、阪大の名を高めています。その理由は、モットーである「地域に生き世界に伸びる」を忠実に実践してきたからです。阪大の特色は、この理念に全てが集約されています。また、大阪大学は、常に発展し続ける大学です。新たな試みに果敢に挑戦し、異質なものを迎え入れ、脱皮を繰り返すみずみずしい息吹がキャンパスに満ち溢れています。