梅干しの半分以上が海外製? 農業と食をつなぐフードシステム
海外で作られる梅干し
私たちが口にする食べ物は、農業、加工業、流通・サービス業など多くの過程を経て食卓にのぼります。この生産から消費までのプロセス全体を「フードシステム」といいますが、その構造は複雑で見えづらいものになっています。例えば梅干しの場合、和食のイメージからそのフードシステムは日本国内で完結していると思うかもしれませんが、実際は消費量の半分以上が海外で製造されています。梅干しをはじめ、身近な食品のフードシステムは世界にも広がっており、グローバルで複雑なフードシステムによって私たちの食は支えられています。
もやしの価格は安すぎる
また、フードシステムが抱える問題にも目を向ける必要があります。ここでは「低価格問題」を取り上げてみましょう。価格が安いことは私たち消費者には好ましいことと思うかもしれませんが、行きすぎた低価格はフードシステムの存続を危うくします。例えば、物価の優等生ともいわれ、スーパーマーケットでは1袋30円程度で販売されているもやしですが、その価格は生産者の経営が成り立つ水準ではなく、廃業する生産者が後を絶ちません。生産コストが一層上がっている昨今でも、店頭のもやし価格はそれほど上がっておらず、フードシステムの中で、適正で公正な価格が形成されていないといえます。
持続的なフードシステムを築くために
もやしの生産者団体は、現状の価格に10円上乗せしてほしいと訴えています。1袋につき10円の値上げで生産者の状況をわずかに改善することができますが、激しい低価格競争を繰り広げるスーパーマーケットにとって、もやしは安さをアピールできる商品であるため値上げには消極的です。また食費を少しでも節約したいと考える消費者にとっても購入頻度の高いもやしの値上げは受け入れがたいものです。このままではもやしの生産者はさらに減少し、身近な野菜ではなくなるかもしれません。食べ物の価格に対する私たち消費者の理解と行動についても、フードシステム論の重要なテーマになっています。
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先生情報 / 大学情報
福島大学 食農学類 准教授 則藤 孝志 先生
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フードシステム論、農業経済学先生が目指すSDGs
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