持続的成長が見込まれるこれからのビジネス、「農業」

ビジネスの視点を農業に
日本では農業が抱えている課題として、人材不足に加えて、農地の減少も心配されています。それに対しては、行政が政策や制度で農地を保全して、生産者が土地を農地として活用し続けて経済的な利益をしっかり確保していくといったアプローチが採られてきました。しかし、これだけでは十分な成果が出ていません。今後は農業を、食料生産の手段ではなく、ビジネスとして捉えていくべきとの考え方が生まれています。
生産・消費活動全体を俯瞰
そこから発生したのが「フード・バリューチェーン」という新しい概念です。現在は、生産者から消費者の手に食品が渡るまでに卸売や加工、物流など多くの業者が入ることから、情報がうまく伝わらない「業界の壁」が存在します。そこで、新たにチェーン・マネージャーという役割を立てて、その壁を排除して、全体を俯瞰(ふかん)して適切な業務指示を出すというビジネス・モデルが注目されています。
さらに、チェーン・マネージャーは人ではなく、モノと情報の流れをデジタル管理するシステムに担わせようという考え方です。生産者、卸売業、加工業と、小売業、飲食店、消費者が、共通の受発注システムを介して取引を行うわけです。これにより、消費者のニーズが生産者たちに確実に伝わる、適切な食品提供が可能になり経済的に潤おう、食品ロスが減る、「欲しい品」が確実に手に入るなどのメリットが生まれます。この種のビジネスは日本でも徐々に動き出しており、将来的にはさらに活性化していくと予測されます。
「持続可能な食料システム」をめざして
世界では、経済的・社会的・環境的な条件を満たしながら、すべての人類に対して食料提供を保障し、充分な栄養をもたらすことができる一連のしくみとして、持続可能な食料システムの構築が大きな課題となっています。そのためには、もうかる農業、社会に役立つ農業、環境に優しい農業を追求し、持続可能な農業を実現する広がりのある研究領域にチャレンジすることが期待されています。
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先生情報 / 大学情報

東京都市大学 環境学部 環境経営システム学科 教授 木下 幸雄 先生
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食料経済学、農業経済学、経営学、環境学先生が目指すSDGs
先生への質問
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