音環境のバリアフリーとは

音環境のバリアフリーとは

音響式信号機の「ピヨピヨ」について考える

「ピヨピヨ」「カッコー」と鳴いて、信号の変化と進むべき方向を知らせる音響式信号機について考えてみましょう。視覚障がい者の人たちの横断に役に立っているのは確かですが、今のシステムがベストとは言い切れません。まず、音だけに頼って真っ直ぐに歩くことは容易ではありません。点字による誘導ブロックに従って歩いた方が、より安全に歩けます。
もう一つが音の大きさの問題。視覚障がいのある人が方向に迷うことなく歩けるようにするためには、ある程度大きい音が必要ですが、1日中その音を聞き続ける近所の住民にとっては信号が生活の妨げになることがあります。実際、住民からの苦情で、視覚障がいのある児童が通う特別支援学校前の音響式信号機の音量を小さくすることになったということもあります。特別支援学校の前でさえ、騒音の苦情が出てしまうのです。今の音響式信号機のシステムでは、視覚障がい者と周辺住民それぞれの生活を両立するのは難しいと言えます。

「ピヨピヨ」に替わる「カタカタ」の音とは

解決策の一つとして、最近、日本中に広まりつつある「エスコートゾーン」があります。点字ブロックのような凹凸のあるエリアを横断歩道の真ん中に敷いたものです。視覚障がい者が渡る方向をエスコートゾーンが誘導してくれるので、音響式信号機は信号がいつ青に変わって、いつまで渡れるかという信号の変化だけを伝えればよくなります。これなら従来ほどの音量はいりません。
また、ヨーロッパやオセアニアで使われているのは、腰ほどの高さでハイヒールのような「カタカタ」という音を立てる信号です。日本の音響信号は3メートルもの頭上にあり、立った人の耳の位置で聞こえるようにするためには音量を上げなければなりません。このため2階や3階に住んでいる人には非常に大きく聞こえてしまいます。しかし腰の高さの音響式信号機から出る音なら、信号周辺に住んでいても、家の中まで音が響かないのです。

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先生情報 / 大学情報

福島大学 共生システム理工学類  教授 永幡 幸司 先生

福島大学 共生システム理工学類 教授 永幡 幸司 先生

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メッセージ

「良い音環境に住みたい」という思いが、僕の原動力。その思いを実現するために、音響学的(理系的)手法から社会学的(文系的)手法まで、使えるものは何でも使った研究を進めています。音が好きだからこそ、飽きずに続けられる研究です。大学は、自分が好きなことを突き詰められる場。これは、音の世界には限りません。あなたにも「より良くするために、どうしたらいいのか」を徹底的に考えられるような、自分が本当に好きな分野を見つけてもらいたいと思います。

福島大学に関心を持ったあなたは

「新生福島大学宣言」で明らかにした、「福島大学の理念」は、(1)自由・自治・自立の精神の尊重、(2)教育重視の人材育成大学、(3)文理融合の教育・研究の推進、(4)グローバルに考え地域とともに歩む、を掲げています。特に、学生教育を重視し、全学年にわたる少人数教育、共通領域科目及び専門領域科目とともに、キャリア形成論などのキャリア創造科目を含む自己デザイン領域科目を新たに設け、さらに文理融合教育を進めています。