七夕まつりの「伝統」を、どう継承していくべきか
「仙台七夕まつり」
七夕には、全国でさまざまなまつりが開催されます。なかでも宮城県の「仙台七夕まつり」は、毎年200万人もの来場者を誇ります。江戸時代に仙台藩祖である伊達政宗が奨励して始まったこのまつりは、地域文化として定着しました。明治維新後は伊達家の後ろ盾がなくなり、衰退しましたが、大正時代に地元の商店街が商業振興を目的に復活させて、今のような七夕まつりが行われるようになりました。主にメインストリートに店を構える商店主たちが、まつりの文化を継承して開催しています。
本来の目的から遠ざかる現状
「仙台七夕まつり」の目的の一つは商業振興ですが、現在ではまつりの期間中の売り上げが逆に減ってしまうことが問題になっています。来場者が押し寄せて密集するために、買い物を楽しむどころではない状況が生まれてしまったのです。その結果、七夕まつりから撤退したいという商店が出てきました。特に、テナントで入居しているチェーン店からの声が多い傾向にあります。
昔の商店街は店舗の2階に住居があり、お店の人たちは生まれた時から地域文化の中で生きてきました。しかし商店街の再開発が進むにつれ、古い店舗兼住居の商店がビルに建て替わり、「職」と「住」が切り離されるようになりました。さらに世代交代ができずに閉店した場合は貸店舗となり、代わりにその場所に特にゆかりのないチェーン店が入居し始めます。各商店が店先に七夕まつりの飾りを出すには数十万円の出費が必要になるため、それを上回る売り上げが出なければチェーン店に利はありません。経済効率と伝統文化の継承を両立させることが難しい状況になっているのです。
伝統の継承を考える
近年では、まつりの担い手不足から主催を自治体に移行するケースも全国的に多くなっています。しかし、自治体も経済効果の実利を求めるため、「伝統文化を守る」という本質が必ずしも保証されるとは限りません。社会の変質に伴って、まつりの伝統をどう継承していくかが問われています。
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福島大学 人間発達文化学類 教授(学類長) 初澤 敏生 先生
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