抗原は認識しない? 新たに発見された自然リンパ球
新たに発見されたリンパ球
体内にはT細胞やB細胞などのリンパ球が存在し、外から入ってきたウイルスや細菌といった病原体(抗原)を認識して、身体を守るために働きます。リンパ球はすでに大方の種類が発見されたと考えられてきましたが、21世紀に入ってから「2型自然リンパ球」(ILC2)という新たなリンパ球が見つかりました。
抗原に反応しない自然リンパ球
ILC2は従来のリンパ球とは異なり、体外から入ってきた抗原を認識する能力を持っていません。にもかかわらず、寄生虫感染に対する防御や、アレルギーの発症に働きます。
花粉症などのアレルギーは、アレルゲン(抗原)が外から入ってくることによって引き起こされます。その一方で、気管支ぜんそくやアトピー性皮膚炎といったアレルギー性疾患では、季節や環境に関係なく1年中症状が出ることがあります。この事実から、アレルギーは抗原認識だけで起こるのではない可能性が考えられていました。こうした原因不明だった病気について、ILC2の分析に期待が寄せられています。ILC2が死んだ細胞が出す成分やホルモンなど体内のさまざまな因子に反応し、症状を引き起こしていることがわかってきたからです。
ILC2は厄介な存在?
ILC2は、アレルギー以外にも肺線維症などのさまざまな病気を誘導していると考えられています。肺線維症は傷を修復するとき過剰にコラーゲンが作られることで、肺が硬くなってしまう病気です。その一方で、ILC2は感染症にかかったときにボロボロになった組織を修復する機能や、寄生虫を体外に押し出す機能も持っています。このようにILC2には身体を守る機能はあるものの、過剰に作用すると病気を誘導してしまうため、働きをコントロールする薬が求められています。
すでに実用化されている抗体製剤という薬を使えば、ILC2をある程度抑制できることがわかっています。しかしとても高価で一般の患者にはなかなか行き渡らないため、より安く汎用性の高いものが作れないか、さらなる研究が始まっています。
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大阪大学 医学部 医学科 教授 茂呂 和世 先生
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