知能を感じるから、知能の存在を確信する
知能とは何だろう
私たちがロボットというときは、知能があることを想像しています。「ドラえもん」はロボットですが、同じ機械でも扇風機をロボットという人はいないでしょう。では、知能とは何でしょうか?
まず思い浮かぶのは、自分で判断して行動を制御する脳の存在です。確かに、賢いロボットには脳の働きをするコンピュータが内蔵されていて、その命令によって動きます。脳があるので知能があると判断しているのです。これは、生物、特に高等な生物には脳やその命令を伝える神経があることから類推しているのです。
知能の源泉は、体と環境の相互作用
ところが、生物のなかには脳がないのに、いかにも知能があるように見える生物がいます。例えばクモヒトデという棘皮(きょくひ)動物は長い5本の腕を動かしながらエサを求めて海底を這い回ります。岩のような障害物があっても、腕を伸ばして避けながら移動します。これを見ると、知能を感じてしまいます。エサを求めるという目的があり、岩という予期しない障害物をうまく避けることができるからです。実は、このような生物はほかにもたくさん存在します。これらの生物に共通するものは何かと考えると、自己の体と環境の相互作用です。多様な環境に柔軟に対応できることが知能の源泉です。
脳のないロボットに知能を感じる
フッサールという哲学者は現象学を提唱しました。実在するから感じるのではなく、感じるから存在を確信するという考え方です。これはまさに知能に対する認識と同じです。このことはロボットでも実証できます。ムカデのような多関節で、それぞれの関節にあるゴム製の左右2本の脚がモーターで回転するロボット(i-CentiPot)を作ると、デコボコの地面であっても柔軟に対応しながら前に進むことができます。これにはコンピュータは内蔵されていませんが、脚と体が地面になじんで動くという単純な機構のロボットでも、知能を感じることができます。このように脳の存在ではなく、知能を感じるから、知能の存在を確信するのです。
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大阪大学 工学部 応用理工学科 機械工学科目 教授 大須賀 公一 先生
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