神経の成長を助けるキノコ? 食品成分で脳疾患を予防する
脳疾患の予防に役立つキノコとは
アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患は、一度発症してしまうと現在の医療では完治する方法がありません。そのため発症しないように予防することが大切で、日常的に摂取することで予防に役立つような食品成分についての研究が行われています。その中で注目されているのが、タモギタケという北海道に多く生息するキノコに含まれている「エルゴチオネイン」という物質です。
エルゴチオネインが神経新生を促進
エルゴチオネインは、強い抗酸化作用を持つことで以前から知られている物質です。哺乳類は合成経路を持たないので自分で作ることはできませんが、キノコや野菜、果物など多くの食物に含まれているため、人の血液からはかなりの濃度のエルゴチオネインが検出されます。
近年の研究により、このエルゴチオネインには神経新生を促進させる作用もあることがわかってきました。神経は胎児の間に盛んに新生されますが、大人になってからも海馬など脳の一部で神経新生が見られます。エルゴチオネインは神経の成長を助ける「神経栄養因子」という物質を誘導することで、神経新生を促進します。そのため、神経変性疾患のみならず、うつ病なども含めた幅広い脳疾患に対する予防効果があると考えられます。実験ではすでに脳疾患への予防効果が確認されていますが、神経栄養因子を誘導するメカニズムについてはまだよくわかっておらず、解明のための研究が進められています。
エルゴチオネインのメリット
エルゴチオネインには、疾患予防に効果的な食品成分としてのメリットがたくさんあります。一つは哺乳類が自分で合成できないために分解することもできず、細胞の中に取り込まれて長く体にとどまる点です。また、経口で服用しても脳まで届くことが動物実験で確認されており、安全性についても問題ありません。このように、エルゴチオネインは予防成分としての効果だけでなく、体への働き方も理想的な物質なのです。
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