イヌの「てんかん」を治すには? 神経病の治療法と予防法を探る
動物も「てんかん」になる
神経系が障害される病気(神経病)はたくさんありますが、そのうちの一つに「てんかん」があります。てんかんの発作は脳の電気信号のバランスが乱れることによって起こります。てんかんの原因となる病気は様々で、発作症状も多彩です。例えば突然意識を失いけいれんが何度も起こる場合もあります。イヌやネコのてんかん患者の約3割は薬を十分に投与しても効果が不十分な難治性てんかんです。動物のQOLを落とし、死につながる可能性もあるため、発作を軽くし、なるべく発作が起きない状態にするための治療が求められています。
てんかんの新たな治療法
「迷走神経刺激術(VNS)」は、開頭術を必要としないてんかん外科の一種で、難治性てんかんの患者さんへの治療として期待されています。微弱な電気刺激を発生する小さな装置を肩に埋め込み、頚部の迷走神経を刺激します。迷走神経が受けた刺激が脳に伝わり、脳の電気信号の乱れを調整しててんかん発作を抑えるのです。さらに長期刺激によりてんかんが起きやすくなっている神経の回路が改善されることもわかっており、体への負担の低い、効果の高い治療法だといえます。ヒトの患者さんのみならず、イヌにも効果が見られていますが、まだ事例が不足しており、治療した動物の患者さんたちのデータをもとに、より有効な刺激の調節法などが研究されています。
人間の好みが神経病の原因に?
てんかんなどの様々な神経疾患の原因として、人間による品種改良も問題視されています。イヌはもともとオオカミのような骨格をしており、頭がい骨も脳も楕円形をしていました。しかし体が小さく頭が丸い容姿が好まれるようになり、品種改良によって頭がい骨の形が変化しました。丸い骨の中に脳が無理やり押し込まれているため、神経にも悪影響を与えている可能性があります。神経病を予防するためにも、骨の形と神経の関係を探る研究が行われています。
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麻布大学 獣医学部 獣医学科 准教授 齋藤 弥代子 先生
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