イヌもうれし涙を流す! 飼い主とイヌの特別な関係
動物も感情で涙を流す
ヒトとイヌが目を合わせて交流すると、両者の体内ではオキシトシンという神経伝達物質が分泌されます。オキシトシンは「絆ホルモン」と呼ばれており、家族の暖かさを感じたときに増加します。このオキシトシンはイヌの涙腺にも作用して、うれし涙を流すことが明らかになりました。動物が涙を流すことはすでに知られていましたが、眼球を守るための機能しか研究されておらず、感情に関係した動物の涙は世界初の発見です。
イヌが流すうれし涙
オキシトシンと涙の関係を探るために、イヌと飼い主の再会場面に注目した実験が行われました。まず、イヌを自宅に残して飼い主が外出し、5時間以上後に帰宅します。再会後5分以内に出た涙を計測すると、普段と比べて涙の量が約20%増加しました。
比較のために、飼い主以外の人と再会する実験も行われました。イヌをデイケアセンターに預けたあと、飼い主と再会した場合とデイケアセンターの職員が再会した場合を比較します。その結果、飼い主と再会したときだけイヌの涙の量が増加しました。
さらに涙とオキシトシンの関係を調べるために実施されたのが、イヌにオキシトシン入りの水を点眼する実験です。対照液を点眼した場合よりも、オキシトシン入りの水を点眼したときのほうが15分以内に流す涙の量が増えました。つまりイヌはオキシトシンが分泌されるような幸せな状況のとき、涙を流していると考えられます。
イヌもヒトに影響を与える?
うれし涙のほかにも、イヌに関するさまざまな動物行動学の研究が行われています。その結果、イヌと飼い主の間には特別な関係があり、イヌの行動や遺伝子に影響を与えていることが明らかになってきました。その一方で、ヒトもイヌから影響を受けている可能性があります。例えばイヌを飼っている家庭は、子どもが感じるウェルビーイングの数値が高い傾向があります。このことから、親子の会話や雰囲気、人間関係などにイヌがどのような影響を与えているのかを探ろうと、新たな研究も始まっています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
麻布大学 獣医学部 動物応用科学科 教授 菊水 健史 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
動物行動学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?