講義No.12609 医療技術

誤った診断をしている? あいまいさをなくした科学的な検査を

誤った診断をしている? あいまいさをなくした科学的な検査を

条件があいまいな生理検査

臨床現場では、心臓や神経といった器官の様子を調べるためにさまざまな生理検査が行われています。しかし珍しい病気に対する検査のなかには、手法や条件があいまいなものもあります。そのため身体の異常を見落としていたり、病気ではないのに病気だと診断していたりする可能性がゼロではありません。正しく診断するために、生理検査の手法や条件を見直す研究が行われています。

神経の異常を発見するには

条件があいまいだった検査のひとつが、目と脳を結ぶ視神経の病気の検査です。視神経が病気になると目で見たものを脳でうまく認識できなくなってしまうため、患者は「目が見えない」と感じます。目が見えないとき、原因は眼球の病気であることが多いですが、約1%の確率で神経に異常が見られます。病気を見つけるために、白黒の格子模様と、色が反転した画像を交互にモニターに映し、神経や脳の反応を調べる検査が行われています。健康な場合は各画像を0.1秒ほどで認識できますが、病気があると認識にかかる時間が長くなります。

検査に必要な視力は?

検査はモニターから1.27メートル離れた位置で行うため、視力の低い人は画像がよく見えず、検査結果が悪くなる可能性があります。しかし検査に最低限必要な視力は、厳密には決められていません。そこでメガネのような視力矯正器具を実験の参加者に装着してもらい、視力によって結果に違いが出るか分析が行われました。研究前は0.6程度の視力がないと検査が難しいと考えられていましたが、研究結果から実際にはもう少し視力が低くても検査が可能であることがわかりました。しかし、同時に近視が強い場合は、必ずメガネなどで視力を補助しなければ正しい結果が出ないこともはっきりとしました。
神経の病気のほかにも、臨床現場では条件や手法があいまいなまま慣習のように行われている検査がたくさんあります。病気をいち早く発見し患者の身体を守るためにも、検査に対する科学的な根拠を証明することが求められています。

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先生情報 / 大学情報

麻布大学 生命・環境科学部 臨床検査技術学科 准教授 小野澤 裕也 先生

麻布大学 生命・環境科学部 臨床検査技術学科 准教授 小野澤 裕也 先生

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臨床生理学

メッセージ

まずは、医療の現場に興味を持ったあなたは素晴らしいです。臨床検査技師は国家資格を取得したあとも一生勉強し続けることが必要な分野です。大変ですが、知識を身につけ技を磨けば、それが直接人の役に立っていると実感できるため、達成感も大きいです。私自身、臨床検査技師になって人生が豊かになったと感じました。もし勉強に苦手意識があっても、夢をかなえるための強い意志さえあれば大丈夫です。大学で一生懸命学び、充実した人生を送ってほしいです。

麻布大学に関心を持ったあなたは

はじまりは1890年に開設した東京獣医講習所でした。
まだ栄養状態が豊かでなかったこの国の、人の生活を豊かにするため、畜産の発展に寄与するため獣医師の養成をはじめました。それから約130年の時を経て、人の社会と動物のかかわりは深くなり、複雑になり、生きものすべてが新しいバランスで循環する「いのちのあしたのあり方」が求められています。
これが私たちの目指す「地球共生系」です。
最先端の研究と確かな実践力で、「人と動物と環境」に向き合い、地球のあしたをつくる。これが私たち麻布大学です。