誤った診断をしている? あいまいさをなくした科学的な検査を
条件があいまいな生理検査
臨床現場では、心臓や神経といった器官の様子を調べるためにさまざまな生理検査が行われています。しかし珍しい病気に対する検査のなかには、手法や条件があいまいなものもあります。そのため身体の異常を見落としていたり、病気ではないのに病気だと診断していたりする可能性がゼロではありません。正しく診断するために、生理検査の手法や条件を見直す研究が行われています。
神経の異常を発見するには
条件があいまいだった検査のひとつが、目と脳を結ぶ視神経の病気の検査です。視神経が病気になると目で見たものを脳でうまく認識できなくなってしまうため、患者は「目が見えない」と感じます。目が見えないとき、原因は眼球の病気であることが多いですが、約1%の確率で神経に異常が見られます。病気を見つけるために、白黒の格子模様と、色が反転した画像を交互にモニターに映し、神経や脳の反応を調べる検査が行われています。健康な場合は各画像を0.1秒ほどで認識できますが、病気があると認識にかかる時間が長くなります。
検査に必要な視力は?
検査はモニターから1.27メートル離れた位置で行うため、視力の低い人は画像がよく見えず、検査結果が悪くなる可能性があります。しかし検査に最低限必要な視力は、厳密には決められていません。そこでメガネのような視力矯正器具を実験の参加者に装着してもらい、視力によって結果に違いが出るか分析が行われました。研究前は0.6程度の視力がないと検査が難しいと考えられていましたが、研究結果から実際にはもう少し視力が低くても検査が可能であることがわかりました。しかし、同時に近視が強い場合は、必ずメガネなどで視力を補助しなければ正しい結果が出ないこともはっきりとしました。
神経の病気のほかにも、臨床現場では条件や手法があいまいなまま慣習のように行われている検査がたくさんあります。病気をいち早く発見し患者の身体を守るためにも、検査に対する科学的な根拠を証明することが求められています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。