どこにでもくっつくナノ薄膜で極薄のばんそうこうができる!
ナノサイズで生まれる新しい性質
プラスチックをナノサイズに加工することで新しい機能を持つ材料を作りだし、医療をはじめさまざまな分野に役立てようという研究が行われています。そのひとつが、生分解性のあるポリ乳酸を使った厚さ数十ナノメートル(普通紙の約1000分の1)の「ナノ薄膜」です。ナノ薄膜は非常に柔らかく、透明度も高くて表面が滑らかなので、例えば、ばんそうこうとして利用すれば、目立つことなく肌への違和感もほとんどありません。
ナノ薄膜のように面を持ったナノ材料は、接着剤がなくても多様な界面にぴったりとくっつくことが特徴です。非常に薄く滑らかであるため、界面の凹凸に沿ってフィットし、分子間に働く力・ファンデルワールス力でくっつくのです。
医療への応用が期待されるナノ薄膜
外科手術では患部の縫合が行われますが、糸で縫い合わせる代わりに、ナノ薄膜を利用する研究も進められています。ナノ薄膜を用いれば、糸で縛る縫合時に起こる臓器の変形が防げるうえ、傷跡が残りにくく、外科医の負担も軽減できます。また、薬剤を薄膜と薄膜のあいだに閉じ込めて患部に貼りつけることで、薄膜から少しずつ薬がしみ出し、薬を持続的に作用させるといった利用の方法も研究されています。これらの研究は、マウスを使った動物実験で成果が出ています。
誰でもできる? ナノ薄膜の作り方
ナノ薄膜は、非常に簡単な方法で作ることができます。まず、ガラスなどで作られた基盤に、水溶性のプラスチックの溶液をのせ、20秒間高速回転させて薄く広げます。その上にポリ乳酸の溶液をのせて、同じように20秒間高速回転させて広げます。基盤を水の中に浸すと、水溶性の部分が解けて、ポリ乳酸の薄膜を回収できます。溶液の濃度を変えることで厚みの制御も可能です。
医療以外にも、香水をナノ薄膜で閉じ込めて香りを持続させることや、顕微鏡で観察する際に試料をナノ薄膜で固定することなど、面を生かしたナノ材料のさまざまな活用方法が期待されています。
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先生情報 / 大学情報
東海大学 工学部 マイクロ・ナノ研究開発センター 教授 岡村 陽介 先生
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高分子化学、生体材料学、ナノ材料工学先生が目指すSDGs
先生への質問
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