低濃度の火山ガスを検知する半導体ガスセンサ
火山ガスから噴火を予知する
日本は世界有数の火山国であり、防災・減災のためにも噴火予知は重要です。火山性ガスに含まれる硫化水素(H₂S)が100 ppmを超えると、人は倒れてしまいます。これまでの研究で、火山性地震が発生するときは直前に、再噴火のときは約1カ月前から、山頂の火山性ガスの濃度が急激に上昇することがわかっており、火山ガス検知の有用性が高まっています。検知器による観測は現在も行われていますが、ガス濃度が高い火口や噴気孔周辺への設置は危険がともないます。そこで離れた場所から安全に観測できるよう、低濃度のガスを検知できる半導体ガスセンサの開発が進んでいます。
電気抵抗の変化を利用
空気中の半導体(酸化物)は、表面を覆う酸素が半導体の中の電子をとらえているため抵抗が強く、電気が流れにくくなっています。そこにガスが吸着すると、表面の酸素は還元ガスと反応して消費されるので、半導体内の電子が自由になり電気が流れやすくなります。この電気抵抗の変化を利用して火山ガスを検知するのが半導体ガスセンサです。温度を上げれば電子が増え、電子が増えればわずかなガスでも存在を把握できることから、現在は加熱して200 ℃以上の高温で使用していますが、加熱するにはエネルギーが必要です。消費電力を抑えるために、50 ℃くらいで電気が流れる酸化物半導体を作ることが今後の課題です。
医療への応用も期待
半導体ガスセンサは、陽極酸化という方法で半導体の表面積を増やし、ガスの通り道をたくさん作ることで、これまでより低い濃度でも検知できるようになりました。さらに極めて低い濃度のガスを検知できれば、離れた場所で火口付近の濃度を測定し、早期の避難計画を立て、観光客に危険を知らせ避難させることも可能になります。
またこの技術を応用し、人間が発するわずかなガス臭、例えば風邪のひきはじめに感じるかすかな臭いなどを測れるようになれば、病気予防など医療にも活用できると考えられています。
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先生情報 / 大学情報
熊本大学 工学部 材料・応用化学科 准教授 橋新 剛 先生
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