「動かない点」に秘められた可能性 非線形問題を解く手がかりに?
「動かない点」が社会に貢献?
コーヒーにミルクを入れてスプーンでかき混ぜると、コーヒーカップの中に少なくとも1カ所は動かない点が存在することが知られています。この動かない点を数学では「不動点」とよびます。また、駅や空港の案内図に書かれている「現在地」も不動点の例です。不動点はある操作によって変化しない安定した点であるため、さまざまな分野で応用がなされています。例えば、物体の運動や水温変化のような物理現象、人口変動、株価の変動のような社会現象の研究において不動点定理が使われています。
不動点を使って最小値を求める
不動点定理が役立つ数学の例としては、凸最小化問題が挙げられます。これは、下に凸な関数である凸関数の最小値を求める問題です。数直線上で定義された関数の場合、関数のグラフを描いて最小値を求めることができますが、高次元の空間で定義された関数や、球面のように曲がった図形上で定義される関数の場合には、関数の最小値を求めることは簡単ではありません。そのような凸最小化問題について、考えている問題を不動点問題に変形することで見通し良く問題を解決できることがあります。
現実に近い非線形問題
数学で取り扱う関数は、一次関数のようにグラフが直線になる線形と、二次関数のようにグラフが曲線になる非線形に分類されます。線形問題はシンプルで扱いやすいですが、現実世界で起こる現象を数学的に定式化すると非線形問題が発生します。例えば、東京とパリを結ぶ最短経路を探すために、地球儀上のパリと東京を連続な曲線で結ぶとき、測地線とよばれる曲線が現れます。平面上で考えるときは2点を結ぶ線分を使って問題を解くことができますが、地球のような球面上では線形の場合の手法が使えません。より現実に近い形で問題を解こうとしたとき、どうしても避けて通れないものが非線形問題なのです。
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東海大学 理学部 情報数理学科 教授 高阪 史明 先生
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