複素ニューラルネットワークでさらに賢くなるAI
複素ニューラルネットワークとは
AI(人工知能)は、指示を与えなくても大量のデータから自ら学ぶ「ディープラーニング(深層学習)」が特徴です。このディープラーニングを可能にしているのが、人間の脳の神経系を模倣した「ニューラルネットワーク」という情報処理の仕組みです。
その分野で今注目を集めているのが、これまでは実数だけが使われてきた入出力の数値に複素数を使う「複素ニューラルネットワーク」です。複素数とは、a+biで表される、実数と虚数単位i(√-1)を組み合わせた数です。
今まで解けなかった問題も解ける!
実数は数直線(1次元)でしか表せませんが、複素数は、横軸に実数、縦軸に虚数をとる平面座標(2次元)で表現できるという特徴があります。このことが、複素ニューラルネットワークの、一度に大量の情報を処理できるという特徴を生み出しました。
また、何かを判断する「決定境界」という軸が、1本から直交する2本になったことで、これまで解けなかった問題も解けるようになりました。従来、1本の軸で区別してAかBかを判断していた処理も、複素ニューラルネットワークでは、A・B・C・Dの4つを一回で区別するという複雑な判断が可能になりました。
このように情報処理の性能が向上したことで、画像処理の精度がよくなったという報告もあります。
新しい関数の発明や四元数でさらに進化
ニューラルネットワークには入力から出力までの間に情報を処理する複数の層があり、その層ではいろいろな関数計算が行われています。ディープラーニングによく使われている「シグモイド関数」では、その関数に複素数を入れたとき、答えが無限大になり、学習ができなくなる場合があることがわかりました。そこで、複素数でもそのような現象が起きないような、新しい関数が考案されました。
また、複素数の虚数単位をiだけでなく、j、kと増やした「四元数」を使うことで、より高度な情報処理を可能にする研究も行われています。
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