地図なしでも道がわかる? 人の脳を真似た未来の移動ロボット

未来の社会を支えるロボット
少子高齢化が進む現在の社会では、働き手が減少する一方で、必要な作業はより多岐にわたってきています。ロボットの導入は、労働力不足を補うとともに、単調な作業や危険な業務から解放された人々がより創造的な働き方を実現する手助けとなります。小型で、低速で移動し、人と関わりながら仕事をするロボットは実用化フェーズに入っており、配膳やビル内清掃といった屋内作業を担うロボットが既に世の中に出てきています。
人間の脳をヒントにした自己位置推定
人間は正確な距離や道順がわからなくても目的地にたどり着くことができます。それは「ここを曲がるとあの建物が見える」といった「連想記憶」を元に道をたどれるからです。一方、現在のロボットは、詳細な地図データがないと自分の位置を把握できず、行動できません。
そこで、人工知能を使って人間の連想記憶を模倣し、柔軟な移動を実現する研究が進められています。この研究では、ニューラルネットワークという技術を用いて、情報を分散的に表現するシンプルな学習方法を採用しています。一般的な人工知能が大量のデータと学習を必要とするのに対して、この方式ではわずか10回程度の学習で移動能力を獲得できます。
多様な場面での活躍の期待
この新しい移動技術が進化すると、ロボットが社会の多様な場面で活躍する可能性が広がります。例えばメガソーラー発電所の点検や、街中でのゴミ拾いです。実用化までには、移動に関してだけでも、前者では雑草に覆われた不整地の移動、後者では予期せぬ障害物や移動する人やモノとの衝突や接触を避ける、といった課題を解決することが必要です。
さらに、ロボットの導入により、人の意識が変わるという問題もあります。例えばゴミ拾いロボットの場合、「どうせロボットが拾うから」とポイ捨てが増える可能性は否めません。安全性を担保しながら自律的に動けるロボットをめざして、技術的な課題と社会的な影響の両面から取り組みが進められています。
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