量子力学のアプローチでネット炎上を素早く抑えられる!?
ネット炎上を力学的な波動の現象としてとらえる
誰かの発言や行動について、インターネット上で非難や反論のコメントが集中し、収拾がつかなくなることを「ネット炎上」といいます。普段の会話でも何気なく炎上という言葉が使われるほど身近な現象ですが、深刻な炎上になると発言者の生活を脅かす脅威になったり、サーバーのシステムダウンなどを引き起こしたりします。そこで、ネット炎上という現象を力学的な波動の現象としてとらえ、炎上防止のための理論的なモデルを確立する研究が行われています。
どんな炎上も素早く止める理論とは
ネット炎上が起こるには、当然、発端となる原因や個別の事情があるはずです。行動心理学や社会学を用いて個々の原因にアプローチできれば、根本的に対処できるかもしれません。しかし、それには時間が必要で、広がり続ける炎上を素早く止めることにはつながらず、影響が拡大していきます。そのため、まずは個々の事情はさておき、どのような炎上のケースにも対応可能なアプローチが必要です。そこで、ネット炎上を「ネットワークの振動エネルギーが時間とともに発散すること」と定義し、発散の仕組みを理解することで、ネット炎上防止につながる理論を見いだす研究が進められているのです。
量子力学と情報通信ネットワーク理論が結びつく
興味深いことに、情報通信ネットワークの構造から炎上が起きるモデルを追求していくと、量子力学の方程式が出現します。ネットワーク上の影響は波動になって伝わると考えるのですが、波の伝わり方の因果関係をわかりやすい形で表現すると、相対論的な量子力学と類似の形式で表現できるのです。物理学の世界で長年にわたって開発されてきた計算方法が、情報通信ネットワークの基礎理論を組み立てるうえで役に立つわけです。
本来ミクロな世界の物理理論である量子力学を使って、インターネットを介した人間の振る舞いを理解する試みは、今後の情報通信ネットワークを支える重要なアプローチの一つなのです。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 システムデザイン学部 情報科学科 教授 会田 雅樹 先生
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