講義No.12780 建築学

伝統的な木造建築を、地震で壊れないようにするには?

伝統的な木造建築を、地震で壊れないようにするには?

壊れず燃えない建築のために

建物がどんな材料で建てられているかによって、木造や鉄骨造、鉄筋コンクリート造などと言います。また、日本の住宅のように柱と梁(はり)のある構造を「軸組み構造」、柱がなく壁だけで建てる建物を「壁式構造」と呼びます。材料と構造を合わせたものが、「構法」です。建物が地震や大風で壊れないように、構法にはさまざまな工夫がなされてきました。それでも被害を受ける建物はあります。それは未だ完成していないからです。構法の熟成をめざして改善の努力が続けられています。

伝統的な木造住宅に適した補強用デバイスの開発

例えば、地震で建物が壊れたとき、どんな現象が起きてどんな壊れ方をしたのか、実験と解析で解明しながら、改善方法を提案していきます。新しい作り方や補強方法を考えて、構法をより熟成させていくのです。補強方法には、壊れにくい壁を作るといったデバイスの開発と、デバイスを建物のどこに入れたらいいかという設計方法の開発があります。補強用デバイスの一つに、ゴムが伸び縮みすることで地震のエネルギーを吸収するダンパーがあります。比較的大きな建物用には実用化されていますが、伝統的な木造住宅に適したダンパーは開発途上です。ダンパー自体の開発と、それをどこに取り付けると効果的に作用するかの両面から研究が進められています。

住む人の思いに沿った補強方法が選べるように

「こういう家に住みたい」「この家のここを大切にしたい」という思いは人によって異なります。補強しようとしたとき、「この方法しか取れない」となると、大切にしたいことを犠牲にしなければならなくなってしまうこともあります。伝統構法の建物は「こうしか直せない」、「古いから建て直すしかない」などと言われてきました。科学的にメスが入ることで、伝統構法の良いところが見直され、最新技術を使えばいろいろな直し方もできることがわかってきています。家主の意見が反映されてベストな方法を選択できる状況を実現するために、さまざまな補強方法の研究が必要なのです。

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先生情報 / 大学情報

金沢工業大学 建築学部 建築学科 ※2025年4月開設 教授 須田 達 先生

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メッセージ

技術者になりたいのであれば、現象をしっかり見て「どうしてそうなんだろう?」と疑問を持つことを大切にしてください。当たり前と言われていることを当たり前だと思ってしまえばそれで終わりで、技術の発展にはつながりません。また、社会の出来事に関心を持ち、幅広く物事に興味を持って欲しいと思います。例えば、美術館を訪れたことの無い人が、良い美術館を設計できるでしょうか。社会に目を向けて、専門に固執せず、いろいろな人と交流し、多様な経験を重ねることが成長につながります。

金沢工業大学に関心を持ったあなたは

金沢工業大学では、講義等で「知識を取り込み」、それを仲間との実験・演習の中で「思考・推論」し、組み替え結びつけることで「新たな知識を創造」し、その成果を「発表・表現・伝達」する独自の学習プロセスを全科目で導入しています。さらに高度な研究環境の中で産学協同による教育研究を実践するとともに、夢考房など知識の応用力を高める多彩なフィールドを実現することで、獲得した知識を知恵(応用力)に転換できる「自ら考え行動する技術者」を育成しています。