電柱は本当に醜い存在? 環境デザインで考える私たちの社会

電柱は本当に醜い存在? 環境デザインで考える私たちの社会

生活に関わるすべての環境のデザインを考える

「環境デザイン」とは、建築、インテリア、ランドスケープ(景観)の3つを柱に、人間の居場所をデザインすることです。家具や小物など、私たちの身の回りにあるものはインテリア、それらの外側にある家や建物は建築、さらにその外側にある庭や街並、自然の風景はランドスケープになります。なぜそこに一本の木を植えるのか、なぜ人はその場所に座るのか、私たちの生活に関わるすべての環境をデザインという視点でとらえることが、環境デザインの考え方です。

いろいろな場所をさまざまな角度から観察する

環境デザインを学ぶには、散歩や旅行をしたりして、いろいろな場所を見て回って観察することが大切です。世の中で居心地がいいとされている場所は、デザイナーではない人によってもしばしば作られています。美しい街並とは何なのか、古くて劣化しているものにもよさは残っているのか、さまざまな角度から観察して考えることが求められます。
例えば、日本のほとんどの街にある電柱は、都市デザインの観点では多くの場合、醜いものと考えられています。しかし、電線を地下に埋設すると、箱状の変圧器が地上に露出してしまいます。果たしてそれは美しい光景でしょうか? そもそも日本では、電柱自体もランドスケープの一つとして認知されているのかもしれません。先入観で否定する前に考えてみる必要があるのです。

何を加え、何を守るべきかを考える

古くても価値のある建物の中には、その寿命を伸ばしたり、防災性を高めたりすることで維持が可能なものがあります。もちろん、古いものなら何もかもいいと考えてしまうのはよくありませんが、私たちの社会の中では、壊す必要のない建物やランドスケープが壊されてしまっていることも事実です。また新しく作るものは持続可能なのでなくてはなりません。今あるものに何を加え、何を守っていくべきか、環境デザインの考え方は、これからの私たちの社会や文化を作っていく上で、なくてはならないものなのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

多摩美術大学 美術学部 環境デザイン学科 教授 岸本 章 先生

多摩美術大学 美術学部 環境デザイン学科 教授 岸本 章 先生

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環境デザイン学

メッセージ

環境デザイン学科は、建築、インテリア、ランドスケープのデザインを勉強する学科です。インテリアは家具など身近にあるもので、その外側にあるのは建築、その外に広がる庭や風景はランドスケープになります。つまり人間が生活するすべての環境をデザインという視点で考えます。
その対象は、家なら一人から、街なら何万、何十万人で、人々を喜ばせ、幸せにするものを作るのが、環境デザインの仕事です。部屋の模様替えに興味のある人は、もう環境デザインの道に一歩入っています。ぜひ一緒に学びましょう。

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1935年の創立以来「自由と意力」を理念とし、社会に数多くの優れた芸術家やデザイナーや教員を輩出し続ける、日本を代表する美術大学のひとつです。大学院と美術学部のある八王子キャンパスでは約4,000人の学生が学び、作品制作する上で理想的な施設・設備を整えています。