住民参加とデジタル技術で、安心安全で魅力的なまちづくりへ
まちづくりの主人公は住民
従来はまちづくりといえば、市区町村の行政が進めていました。半ば一方的に住民たちに、「こうします」と決まったことを伝えることが多かったのですが、最近はそうしたケースに代わって、「みんなの意見でこのようになります」と、まちづくり計画のプロセスに、住民やその関係者が参加し始めています。話し合って、互いに合意しながら進めることで、初めて住民も行政も納得できるまちづくりが実現します。
まちづくりとデジタル技術
例えば住宅地に公園を作るとき、公衆トイレを設置するとします。すると「自宅のそばに設置しないで」といった意見が出ます。すべての意見を聞いていると、公園のど真ん中にトイレを作ることになりかねません。これでは、スペースを有効に使うことができなくなります。住民と行政が議論を深めるには、まず地域の基礎的な情報や地域の良さ、問題点まで、多様な情報を共有することが大切です。そうすることで、その情報をもとに意見を述べ合うことができます。こうした情報のシェアとアウトプットの理解が、住民参加型によるまちづくりを可能にするのです。
そしてここで活躍するのが、まちや建物の形や規模感をわかりやすく提示するVR(仮想現実)やAR(拡張現実)、さらにMR(複合現実)といったデジタル技術です。計画案の規模感や壁面の色・素材感まで再現し、体験できます。また複数案をバーチャルで示して、あそこがいい、ここを改善しようなどと具体的な比較検討ができます。まちづくりとデジタル技術は、親和性が高いのです。
良いまちとは安全、安心、そして魅力的な景観
良いまちとは、まず住民にとって安心、安全であることです。もし災害に見舞われても被害を最小限に抑えられ、治安が良く、人と車との距離が一定に保たれることで交通事故の起こりにくいまちです。そうした安全を目的に設計したうえで、これからは豊かな緑や美しい街並み景観に配慮した住民にとって魅力的なまちづくりを考えていく必要があるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
熊本大学 工学部 土木建築学科 教授 本間 里見 先生
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