暑すぎる夏! 過ごしやすいまちづくりを支援するには
暑さ対策も考える建築学
建築学には建物のデザインや構造を考えるだけでなく、建物周辺の環境づくりを考える「都市環境」や、まち全体を考える「都市計画」という分野もあります。その都市環境と都市計画にまたがる所に位置するのが、「都市環境デザイン」で、例えば都市の暑さを和らげるための研究が行われています。地球温暖化や都市化に伴うヒートアイランド現象により、全国各地で都市の温暖化が進んでいます。特に夏場は街の気温が高すぎて深刻な問題になっているため、建物やまちづくりへの工夫が求められています。
気温変化の現状や原因を探る
まずは暑さの現状を探ろうと、広島県福山市の小学校に設置された百葉箱を使って約1カ月間の気温実測調査が実施されました。すると、夜は都市の中心部に行くほど暑くなる傾向が見られたものの、昼間は海から涼しい風が吹き込むため内陸よりも海に近い場所で気温が低くなりやすいことがわかってきました。
また、気温の変化に大きく関係する空気の流れをつかむために、スーパーコンピュータを使った都市気候シミュレーションも行われています。横浜市を対象にしたシミュレーションでは、高層ビル群の気温分布や空気の流れが可視化され、海風が流れにくい場所は特に暑くなっていること等が明らかになりました。
調査結果をまちづくりに役立てるには?
一般の人々は、都市気候の調査結果を見せられても具体的な対策を思いつきにくいでしょう。そこで研究とまちづくりの現場をつなぐための試みとして、アドバイスマップの作成が始まりました。地図上に暑さ対策の具体的な方法を示したイラストを配置して、暑さが深刻な場所とその対処方法がひと目でわかるようにするのです。例えば、建物を道路との境界線から後退させているイラストがあります。これは道路と建物の間を広くする「セットバック」という建築の手法で、道路に沿って風が流れやすくなることから暑さ対策にも有効です。都市の暑さをさらに和らげていくために、マップの改良や提案方法の研究が行われています。
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