限界集落にできたカフェが人気になった秘密とは?
画一的な建築から、地域性を生かした建築へ
第二次大戦から60年代にかけて、日本では復興のための建築計画学が発達しました。学校や病院などの公共施設を、一定の品質を持った建築として、全国に整備する必要があったからです。一方で、現代においては、ただ機能的であったり画一的な建築ではなく、各地域の風土や歴史、文化を生かした建築物によって、その地域にしかない新しい文化を創造することが求められるようになりました。
限界集落を、建築でよみがえらせよう!
例を挙げましょう。石川県珠洲(すず)市は、昔から揚げ浜(あげはま)式の塩田が有名です。しかし塩田エリアは、過疎化・高齢化で存続が危ぶまれる「限界集落」と呼ばれる地域になっていました。ここに新しいカフェを建築するプロジェクトが立ち上がりました。自然発生的に生まれた集落の風景を壊さないようにするため、空き家となった昔からある建物を利用することになり、そこに現代的な感性をいかに取り入れるかがテーマとなりました。
外観はできるだけ以前の建物の雰囲気を維持したものにしました。外壁に張られていた杉板や樹脂製の波板は、傷みが激しかったため取り替えましたが、日本海の激しい風から壁を守るために生み出された知恵や地域の風景を継承するため、同じ種類の杉板と波板を現代的な方法で張っています。
風土の特徴を生かしながら、新しいアイデアも
工夫したのが建物に大きな穴を空けて、海を額縁を通して見る演出をしたことです。この穴によって海と山の風景もつながれています。これは、限界集落に「風穴」を開け、人やモノなどの流れをよくしようというコンセプトを表現したものです。また、カフェの近くには神社があり、塩田なので「ご塩(えん=縁)」があるということで、若い人をはじめ多くの人が訪れるようになりました。地元では若い人が来るようになり、活気が出たと喜んでいます。この事例では、限界集落と言われている地域でも、建築によって新しい風を吹き込むことで新しい魅力を生み出すことが可能であることを示しています。
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先生情報 / 大学情報
金沢工業大学 建築学部 建築デザイン学科 ※2025年4月開設 教授 竹内 申一 先生
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