目の動きが教えてくれる心の動き
怒った顔と笑った顔が相手に与える印象の違い
人間の顔は、コミュニケーションのツールとして機能しています。人の表情は、向かい合っている相手に大きな影響を与えるのです。例えば怒っている顔を見るとネガティブな感情を抱きがちですし、怖がっている表情も見る人にマイナスの影響を与えます。逆に感じのよい笑顔は、見る人にポジティブな気持ちを与えます。意識して表情を使い分ければ、相手の感情や心理状態を変化させる道具になりうるのです。
コミュニケーションが苦手な人の目の動き
興味深い実験結果があります。モニターに同じような二つの建物の写真を映し出し、その違いを被験者に見分けさせました。その時、画面の片隅に、人が何かを怖がっている表情を、ほんの一瞬だけ映し出すとどうなるでしょうか。視線の動きをチェックしてみると、意外なことに被験者により反応が大きく異なるのです。ごく普通に人と関わることのできる被験者は、何の影響も受けずに課題に集中していました。ところがコミュニケーションを苦手とする被験者は、たいてい片隅に映し出される人の顔に気を取られてしまい、本来集中するべき建物の画像から注意をそらしてしまうのです。
頭の中で起こっていること
なぜ、本来見るべき建物ではなく、人の顔に気を取られてしまうのでしょうか。被験者の脳の様子をMRI(核磁気共鳴画像法)で調べてみました。脳内には感情的な情報を処理するための扁桃体(へんとうたい)と言われる部位があります。通常なら建物の写真に集中するために、この部位の活動を前頭前野という別の部位が働いて抑えるのです。ところがコミュニケーションが苦手な人の場合、前頭前野がうまく働かないため、情動を抑えることができないのです。こうしたメカニズムが明らかになったことで、逆にこのような人たちの不安を取り除き、人とうまくコミュニケーションできるようにするための支援方法が考えられています。
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