目の動きが教えてくれる心の動き

目の動きが教えてくれる心の動き

怒った顔と笑った顔が相手に与える印象の違い

人間の顔は、コミュニケーションのツールとして機能しています。人の表情は、向かい合っている相手に大きな影響を与えるのです。例えば怒っている顔を見るとネガティブな感情を抱きがちですし、怖がっている表情も見る人にマイナスの影響を与えます。逆に感じのよい笑顔は、見る人にポジティブな気持ちを与えます。意識して表情を使い分ければ、相手の感情や心理状態を変化させる道具になりうるのです。

コミュニケーションが苦手な人の目の動き

興味深い実験結果があります。モニターに同じような二つの建物の写真を映し出し、その違いを被験者に見分けさせました。その時、画面の片隅に、人が何かを怖がっている表情を、ほんの一瞬だけ映し出すとどうなるでしょうか。視線の動きをチェックしてみると、意外なことに被験者により反応が大きく異なるのです。ごく普通に人と関わることのできる被験者は、何の影響も受けずに課題に集中していました。ところがコミュニケーションを苦手とする被験者は、たいてい片隅に映し出される人の顔に気を取られてしまい、本来集中するべき建物の画像から注意をそらしてしまうのです。

頭の中で起こっていること

なぜ、本来見るべき建物ではなく、人の顔に気を取られてしまうのでしょうか。被験者の脳の様子をMRI(核磁気共鳴画像法)で調べてみました。脳内には感情的な情報を処理するための扁桃体(へんとうたい)と言われる部位があります。通常なら建物の写真に集中するために、この部位の活動を前頭前野という別の部位が働いて抑えるのです。ところがコミュニケーションが苦手な人の場合、前頭前野がうまく働かないため、情動を抑えることができないのです。こうしたメカニズムが明らかになったことで、逆にこのような人たちの不安を取り除き、人とうまくコミュニケーションできるようにするための支援方法が考えられています。

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金沢工業大学 メディア情報学部 心理情報デザイン学科 ※2025年設置構想中 教授 伊丸岡 俊秀 先生

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認知心理学、認知神経科学、心理情報学

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メッセージ

人の心の中には、常にいろいろな思いが浮かんでいます。しかも、心の中は次々と変化していきます。その結果、考えたいことに集中できなかったり、嫌なことほど頭の中から消すことができなかったり、心は現実の生活に大きな影響を与えています。どうすれば複雑な人の心の中を理解し、状況に応じてうまく対応できるようになるのか、これを探り出すのが心理情報学です。心を測り、働きかける方法を学んで、自分が興味を持っているテーマにじっくりと取り組んでみてください。

金沢工業大学に関心を持ったあなたは

金沢工業大学では、講義等で「知識を取り込み」、それを仲間との実験・演習の中で「思考・推論」し、組み替え結びつけることで「新たな知識を創造」し、その成果を「発表・表現・伝達」する独自の学習プロセスを全科目で導入しています。さらに高度な研究環境の中で産学協同による教育研究を実践するとともに、夢考房など知識の応用力を高める多彩なフィールドを実現することで、獲得した知識を知恵(応用力)に転換できる「自ら考え行動する技術者」を育成しています。