医療従事者を支援する実用的な医療ロボットの開発
小規模な病院でも導入できる医療ロボット
医療の現場でもロボットが活躍するようになりました。例えば、腹部に小さな穴をあけ、細いカメラや機器(鉗子:かんし)を差し込んで行う腹腔鏡下(ふくくうきょうか)手術では、遠隔操作型手術ロボットが普及しています。
しかし、こうしたロボットは大がかりで費用もかかります。そこで、だれもが高度な医療を受けられるように、よりコンパクトな医療ロボットが望まれます。「ロボット鉗子」は、先端の挟む部分の向きを自由に変えることができるため、従来と同じように医師が手で持って使いつつ、これまでより精度の高い手術ができます。また、さらに細かい作業が必要となる、眼科手術用の太さ0.9ミリのロボット鉗子も開発されています。
メカニズムを工夫し、新たな機能を生み出すことで、小規模な病院でも導入できるコンパクトな医療ロボットの実現が可能となります。
ラボラトリーオートメーションで効率化
ロボットが必要とされている医療現場は、手術室だけではありません。これまで手作業で一つ一つ行ってきた検体の検査工程を、ロボットで自動化しようという「ラボラトリーオートメーション」の研究もあります。ロボットで自動化できれば、検体や試薬の量を間違ったり、こぼしたりというミスや、医療従事者自身がウイルスや薬品に触れてしまうリスクも減ります。また、作業実績を自動で記録することもできるようになります。
実用的な医療ロボットを開発するために
医療用ロボットの開発で難しい点は、手術などでの繊細な動きをする小さな機構(メカ)が必要とされることです。ロボットの一つの動きには、モーター一つが必要ですが、なるべく少ない部品で求められる動作ができるような機構を工夫することが大切です。また、人命にかかわるため、手術中に故障しないこと、万が一故障しても、人を傷つけることのないような仕組みも必要です。
こうした医療現場に要求される条件を詳しく知り、満たすことが、実用的な医療用ロボットの開発には不可欠なのです。
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国士舘大学 理工学部 機械工学系 教授 神野 誠 先生
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