医療・福祉分野に広がる「メカトロニクス」の技術
意外に重要だった「足首」の動き
歩く時、足首の関節は重要な役割を果たします。足首が滑らかに動かないと、かかとから着地し、次に足裏全体が着地し体重を乗せ、つま先側で地面を蹴って前方に進むという動きが困難になるのです。
脳卒中の後遺症などで半身が麻痺すると、足を持ち上げることはできても、関節がうまく動かないケースが少なくありません。そこで、リハビリテーションや生活支援のため、メカトロニクス技術を応用した「支援ロボット」の研究が進んでいます。瞬時な力制御ができて、故障時の危険性も低いことで注目されているのが、「磁気粘性流体(MR流体)」と「MR流体ブレーキ」を活用した下肢支援ロボットです。
歩く速度などに応じてブレーキを制御
「MR流体」とは、オイルの中に金属の粒子を混ぜて、磁力によって特性が変化するようにした素材です。これを回転盤と固定盤との間に封入し、電磁石で回転盤の動きを制御する装置が「MR流体ブレーキ」です。
この装置と、角度センサーや加速度センサーなどとを組み合わせ、足首関節の動きをサポートするのが下肢支援ロボットの構造です。かかとが着地する瞬間は回転盤の動きをストップさせ、そこから足裏が着地するまでは緩やかに回転し、つま先で地面を蹴る時には再び回転盤を固定して、足首の関節の動きを再現するわけです。
微妙な抵抗感をバーチャルで再現
MR流体ブレーキは、MR流体に混ぜる粒子やディスク形状を変えることで、動きの滑らかさや固定する強さを自在に変化させられます。小さく作ることも可能なので、歩行補助器の車輪に取り付け、前方の障害物を認識するカメラと組み合わせて、最適な歩行補助を行う「インテリジェント制御型歩行器」の研究も進んでいます。「引っ張られる・引っかかる」といった微妙な感覚もバーチャルで再現できるので、手術の際、患部の抵抗感が指先に伝わりにくい腹腔鏡手術の支援ロボットなどへの応用も考えられるなど、大きな可能性を秘めている研究分野なのです。
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先生情報 / 大学情報
大分大学 理工学部 教授 菊池 武士 先生
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