生体内で自由に動くマイクロマシンを作り、難病治療を躍進させる!
次世代ロボットが活躍するのは体の中
「手術が難しい脳内出血の患者を救うため、ミクロサイズの医師を乗せた潜航艇を血管内に送り込み、出血部をレーザー光線で治療しよう!」
これは半世紀も前に大ヒットした『ミクロの決死圏』というSF映画の話です。次世代型ロボットの開発が著しい現代において、大きさが赤血球と同じくらいのマイクロマシンを血管内に侵入させ自由に動かすという技術開発がすでに行われています。まるでSFの世界のイメージですが、至る所で導入が進むロボットが、活躍の場を人の体内へと広げようとしているのです。
課題はマシンの小型化
体内にマシンを送り込む方法として注射器の使用が考えられますが、注射針を通る極小サイズにすることが大前提となります。しかも体内に入って、例えば赤血球をつかんだり離したりという複雑な動作を行えるようになることも必要です。とはいえ、いまだに3次元のマイクロ構造を作るだけで驚かれる時代です。LSI(大規模集積回路)を作る高度な技術をもってしても、極小な、しかも独立の動きをするマシンを作ることは難しいのです。
体を透過する光を使ってマシンを動かす
前出のSF映画では人が小さくなって潜航艇に乗り込み、外部と連絡をとりながら治療に挑みますが、現実世界では人を極小化することはできません。そのため血管に挿入したマイクロマシンを体の外からコントロールすることになります。ただし、人の体内は水分だらけですから電気を使うとダメージが大きく、最も有力なのが光と磁気を使ったアプローチです。
可視光(約400~800ナノメートルの波長範囲)では生体を透過しないので、「生体の窓」と呼ばれる透過しやすい近赤外線などを使って体内に入り込んだマシンを動かすことが検討されています。光と材料の最先端の相互作用や磁気を組み合わせ、生体内であっても複雑動作が可能なマイクロマシンを実現することで、難病の治療の可能性が期待できるのです。
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先生情報 / 大学情報
山形大学 工学部 機械システム工学科 准教授 西山 宏昭 先生
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