開発が進むヘビ型ロボットの可能性~災害対応から生活分野まで~
ヘビの長所を生かしたロボット
生き物のヘビを模倣したヘビ型ロボットの開発が進められています。ボディはたくさんの関節で連結されており、細長い形状を生かして人間が入れない狭い場所での点検や探索への応用が期待されています。平面だけでなく、斜面や階段、パイプ内を登ることもでき、障害物にぶつからないよう賢く動くことも可能です。生き物のヘビを見ると、身体を左右にうねらせながら前進していることがわかります。これはスケートと同じく「横には滑りにくく前には滑りやすい」という摩擦力の差を応用した動きです。ヘビ型ロボットもこの原理を応用し、全身に取り付けられた車輪に生じる摩擦力の差を利用し、15~30個のモーターを細かく調整することで移動します。
「数式」で制御する
ヘビ型ロボットは狭い場所で使われるため、人間が遠隔操作します。ロボットに搭載したカメラからの映像を安定させるためには、カメラが取り付けられた先頭部分は真っすぐに保ちつつ、その後ろのボディは左右にうねらせる必要があります。たくさんのモーターを手作業でコントロールしてこうした複雑な動きを再現することは困難なため、数式を使った自動計算が行われています。人間から出される指示と、ボディの傾きや地形の状況、障害物の有無などを数式にすることで、各関節(モーター)をどのように動かすかを瞬時に計算します。数式上でより良い動きを発現させることで、生き物を超える動きができるようになる可能性があるのです。
進む実用化
2018年には、西日本豪雨災害によって崩壊した家屋の中に入って、瓦礫内の状況をカメラで記録し、家主に提供しました。将来的には、福島第一原子力発電所の廃炉作業に利用される計画もあります。こうした災害対応以外にも、階段や入り組んだ場所を掃除したり、人間の身体に巻き付いてマッサージをしたり、さらに、木から木へと飛び移るトビヘビのように空中を飛行するなど、ヘビ型ロボには大きな可能性が秘められています。
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電気通信大学 情報理工学域 II類(融合系) 先端ロボティクスプログラム 教授 田中 基康 先生
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