量子論と相対性理論を統合せよ! 宇宙定数問題を解く鍵は超弦理論?
「ダークエネルギー」は現在の物理学の難問
現在の物理学の難問に、「ダークエネルギー」「宇宙定数」をめぐる問題があります。宇宙にある物質同士は重力で引き合いますが、遠く離れた星の間の距離は加速的に増大しています。これは宇宙自体が加速膨張しているためです。加速膨張の原因となる、重力に反発するエネルギーの正体はよくわかっておらず、「ダークエネルギー」と呼ばれます。真空に満ちたエネルギーがその候補と考えられていて、アインシュタインの一般相対性理論に現れる「宇宙定数」というもので表されます。
相対性理論と量子論の統合
相対性理論と並ぶ現代物理学の理論に、量子論があります。ミクロな世界の現象を説明する理論で、宇宙を形づくる素粒子とそこに働く力を考える基礎となります。しかし、一般相対性理論で説明される重力は量子論に基づいて考えることが未だできず、二つの理論の統合も現代物理学の難問の一つです。そこで注目されているのが、「超弦理論」です。これは、素粒子が実は「粒(点)」ではなく「振動するひも(弦)」であると考える「弦理論」と、「超対称性」を組み合わせたものです。超対称性とは、どの素粒子にも真空のエネルギーを打ち消し合う対になる素粒子が存在するという性質です。
カギは「超弦理論」?
宇宙定数の何が難問かと言うと、量子論(と特殊相対性理論)に基づく素粒子の理論で宇宙定数を計算すると、一般相対性理論に基づく観測で得た数値と、何十桁もかけ離れた大きな値が出てしまうのです。一般相対性理論も量子論も、それを裏付ける多くの実験・観測があるのですが、二つの理論から出発して現実の宇宙定数(ダークエネルギー)をうまく説明することができないのです。二つの理論を統合すると期待される超弦理論をもとに発展させた最近の研究では、観測値に近づくような小さな宇宙定数が残る新たなメカニズムを提唱できました。二つの理論の統合、宇宙定数やダークエネルギーをめぐる難問を解くため、多くの研究者が新しい理論の構築や実験、観測に取り組んでいます。
参考資料
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