地球を作り、人間に生命を与えたのは「ウチュウジン」?
「ウチュウジン」の正体を探る
宇宙は世界中の科学者が関心を寄せるテーマですが、最近は「ウチュウジン」の正体を探ることで、宇宙環境を解き明かす研究も行われています。ウチュウジンは漢字で書くと「宇宙塵」で、宇宙に存在する塵(ちり)のことです。それが、どんな物質で構成され、どんな状態で存在しているのかが徐々に明らかになっています。
主な物質はカンラン石と輝石
その研究手法は、赤外線天文衛星を用い分光観測という手法でスペクトルの情報を得るというものです。この情報に加え、理論的に宇宙環境を示す平衡凝縮論や宇宙元素組成をもとに物質を特定し、その物質に対し様々に条件を変えて、実験室でも観測と同様な方法でスペクトルを測定します。この2つの結果を比較し合致すれば、その物質が宇宙に存在していることや、塵の温度や化学組成などを知ることができます。その結果、宇宙塵の有力な候補物質はカンラン石や輝石という地球のマントルを構成する鉱物であることがわかってきました。ちなみにカンラン石は8月の誕生石でペリドットとも呼ばれる宝石で、1ミクロンにも満たないペリドットの粒子が星の周りに存在していることがわかります。
太陽系の誕生にも関わっている?
かつて宇宙塵は観測を遮る邪魔者扱いをされていましたが、近年の研究では恒星や惑星の誕生に不可欠なものであることがわかり立場を一転させました。恒星がその役目を終えるとき、重元素を含んだガスを放出します。ガスは一気に冷やされるため、原子は結晶になる前に固定され、アモルファス(非晶質)の状態となります。しかし一方で、星の周りでは宇宙塵の1割程度は結晶として存在することも観測から明らかになりました。これはアモルファスが星によって加熱され結晶化するためだと考えられます。宇宙塵はガスとともに星雲を形成し、そこから恒星や惑星が生まれます。太陽系もそれと同様に誕生しました。つまり、地球の起源も宇宙塵の集合体であり、その地球によって育まれた生命の一つである人間の起源もまた宇宙塵なのです。
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先生情報 / 大学情報
大阪産業大学 デザイン工学部 環境理工学科 教授 茅原 弘毅 先生
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