物質と力と空間はすべて「ひも」? 宇宙の設計図を知る理論
重力の正体は「空間のゆがみ」?
素粒子物理学では、物理の基本要素である「物質」や「力」の性質を解明しようという試みが続いています。「物質」を小さく分けていくと、原子より小さい13種類の素粒子に行きつきます。そしてそれら素粒子の間に働く「力」は、電磁気の力や重力など4種類が知られています。特に重力は「一般相対性理論」により、「空間や時間のゆがみ」によって生じる力であることが予言されました。そして実際に、宇宙で重力が強く作用する空間では、空間のゆがみのため光がまっすぐに進みません。このように私たちが存在する空間自身が重力と密接にかかわっています。
物質と力を統一する量子力学!
電磁気の力は電波(光)という波の側面を持っています。また重力波という重力の波も2016年に観測され話題になりました。このように力は波の性質を持っています。一方、素粒子は点のような「粒子」と考えることができます。波は広がりを持っているので、物質(粒子)と力(波)は大きく異なるように思えます。しかし「量子力学」により、実はミクロの世界では物質も力も、粒子と波の性質をあわせ持つ「量子」によって統一的に理解できることが解明されました。例えば光の正体は「光子」と呼ばれる量子です。しかし重力だけは量子による説明ができませんでした。
「ひも」で宇宙を説明する?
そこで新たに提唱されたのが「超弦理論」です。この仮説は、13種類の素粒子や4種類の力と関連する様々な量子の起源が、実はたった1種類の「ひも」であるというものです。そして、このひもが変形や振動することで、あたかも別々の量子として振る舞うと考えられています。特に重力もひもの振動の一つであると予言されています。しかし、この宇宙が本当に超弦理論で説明できるのかはまだ解明されておりません。もし超弦理論が正しければ、「この宇宙とは何か?」や「ブラックホールの中心部はどうなっているのか?」といった問題が超弦理論によって解明される日が来るのかもしれません。
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静岡大学 理学部 物理学科 准教授 森田 健 先生
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