膝前十字靭帯断裂の要因の一つ、「サイレントピリオド」って何?
長期離脱を強いられる重傷
運動系の部活動をしている、あるいはスポーツに関心があるなら、「膝前十字靭帯(ひざぜんじゅうじじんたい)」というワードを一度は耳にしたことがあるでしょう。この靭帯は大腿骨(だいたいこつ・太ももの骨)と脛骨(けいこつ・すねの骨)を結んでおり、衝撃によって脛骨が前に行き過ぎるのを防ぐ役割と、回旋を抑制する役割を持っています。非常に重要で丈夫な靭帯ではありますが、その断裂は完治まで1年を要するケースもあるほどの重傷であり、アスリートの天敵ともいえるけがの代表格でもあります。
発生のメカニズムは未解明
古くからアスリートのキャリアを左右しかねない重傷として知られてきた膝前十字靭帯断裂ですが、発生のメカニズムははっきりとわかっていないのが実情です。これまでの研究から「神経・筋協調性」が関わっているということが定説の一つになりつつあります。しかし、この言葉は定義があいまいで、主観が介入する部分もあり、エビデンスとしては不十分です。近年、それを数値やデータなどから定義付け、断裂のメカニズムを解明しようという動きが活発化してきました。
筋肉の休止時間「サイレントピリオド」に着目
膝前十字靭帯はわずか0.04秒で断裂します。着地の際に断裂しやすいといわれており、研究で着目されたのが「サイレントピリオド」と呼ばれる筋肉の休止時間です。運動中、筋肉は絶えず活動と休止を繰り返しています。ジャンプ運動の着地の際、サイレントピリオドの間隔、つまり筋肉が再始動するまでの時間がどうなっているか、また筋肉が再始動した際にどのような活動の仕方をするかを、筋電図を確認することで指標化する試みが進められています。少しずつその傾向や規則性が導き出されつつあり、研究がさらに進んで明確な数値を定められれば、膝前十字靭帯断裂のメカニズム解明に向けての大きな一歩となるでしょう。そして、その先にあるけがの予防強化、受傷後のリハビリの短縮化や効率化などの未来につながる可能性も大いに秘めています。
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