カラダの中にある時計 ~ 概日リズムと健康の話 ~

カラダの中にある時計 ~ 概日リズムと健康の話 ~

ヒトの概日リズム周期は24時間より長い

生物が持つ、地球の自転に合わせた約1日のリズムを「概日リズム」といい、睡眠・覚醒をはじめとした多くの生命活動が概日リズムに沿って変動しています。
この概日リズムを保つシステムが「体内時計」であり、この体内時計を形成しているのが「時計遺伝子」です。時計遺伝子の発見が2017年のノーベル生理学・医学賞を受賞したことは記憶に新しいですね。
この概日リズムの長さは生物によって異なり、ヒトでは24時間より長いことがわかっています。朝に日の光を浴びると概日リズムがリセットされ、24時間の社会生活に合わせることができます。そのため、規則正しい生活を送ることが大切です。朝、日光を浴びないと概日リズムのずれから昼夜逆転してしまいます。さらに、概日リズムが乱れると、がん、高血圧、心臓病、うつ病など重大な病気のリスクが上がることもわかっています。

症状や薬に対する反応にもリズムがある

心筋梗塞は早朝~昼に起きやすい、アトピー性皮膚炎のかゆみは夜間に強くなる、というように、病気の発症や症状の出方にも概日リズムがあり、「病気の時刻表」とも呼ばれています。
「時間薬理学」の研究は概日リズムを考慮して、例えば早朝に発作が起きやすいぜんそくの薬は、早朝に効くよう寝る前に飲むというふうに、服薬のベストな時間帯を考えていくものです。薬の効き方や副作用の出方にも時刻による違いがあるため、副作用が出にくい時間帯を調べる研究なども行われています。

「時間毒性学」について

「時間毒性学」とは、薬の毒性が出やすい・出にくい時間帯を調べ、健康管理に役立てようとする学問です。また、夜勤など夜に光を浴びることで概日リズムが乱れますが、この概日リズム攪乱が引き起こす健康障害についても研究しています。どちらも目的は働く人の健康を守ることです。
「健康を守る」「健康障害を予防する」ことは薬学のテーマの一つです。薬学は身の周りのあらゆる物質・環境とヒトとの関わりを探究する、幅広い学問分野なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

横浜薬科大学 薬学部 健康薬学科 教授 三浦 伸彦 先生

横浜薬科大学 薬学部 健康薬学科 教授 三浦 伸彦 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

時間毒性学、環境科学

先生が目指すSDGs

メッセージ

薬は、使う量によっては毒にもなります。毒性学は、この量を超えたら毒になるというのを調べる学問で、薬学の基盤となる大切な分野です。
私の専門である「時間毒性学」の研究は、同じ量の物質を使っても、使う時刻によっては毒性が強く出てしまうという、概日リズムを考慮した毒性学です。また概日リズムが乱れると様々な健康障害が生じるという研究も進めています。悠久の太古に生物が獲得したこの概日リズムが、最先端の薬の作用や、我々の健康を害するということに興味が湧きませんか。私たちと一緒にワクワクする研究をしましょう。

横浜薬科大学に関心を持ったあなたは

全国初の6年制薬科大学として開学した本学は、患者一人ひとりの苦しみを理解できる”惻隠の心”と”心の温かさ”を育てる教育を実践する。学長にはノーベル物理学賞を受賞した江崎玲於奈先生が就任。世界的な科学者の視点で個性教育を行うとともに、強く薬剤師を志す人の努力にはサポートを惜しまない風土が強みである。