講義No.11215 医療技術

骨や筋肉から、人の体を探っていく「理学療法」の世界

骨や筋肉から、人の体を探っていく「理学療法」の世界

骨の形は、一人ひとり違う

人体は、理学療法や疾病にかかわる重要な部位として認識されているものだけで、200以上もの骨と、400以上もの筋肉からできています。そうした骨や筋肉、じん帯などが実に複雑に、寸分の狂いもなく精巧に組み上がって、人体は形作られています。
「体表解剖学」といって、皮膚の上から触れながら内部の構造や形、機能を理解しようとする学問もありますが、実際に解剖してみると、特に人の骨の形のバリエーションの豊かさに驚かされます。一人ひとり顔が異なるように、骨の形も異なるのです。その中でも似かよった骨をグループ分けすると、歩き方の違いや、起こしがちな怪我などがわかってきます。理学療法に解剖学的視点を入れると、こうした傾向が見えてくるのです。

骨が原因の可能性も!

靴の底を見ると外側、あるいは内側ばかりがすり減る人がいます。歩き方や歩行時の膝の向きなど、原因はいろいろと考えられますが、その一つに踵(かかと)の骨の形状があります。最初に接地する踵が、なんらかの影響を及ぼしている可能性があります。原因が踵の骨の形状なら、その人に合った歩き方や、転倒しやすい高齢者には転ばないコツといった、改善に向けた具体的な指示ができるかもしれません。
また、人体は骨だけでなく、筋肉や関節、さらにじん帯などから成り立っています。それらの形や付き方がわかれば、関節の骨の形状からその人本来の肩の可動域が判明します。なぜこの人は腕が回しづらいのかといった原因もわかってくるでしょう。じん帯も厚さが薄い人や、細い人などさまざまですから、じん帯とねんざとの相関関係も検証できます。

原因を解明し、確実なトレーニングを

確実な治療には、その根本となる原因を探り当てなければなりません。対症療法ではなく、疾病の本当の原因を明らかにすれば、より確実な結果に結びつくトレーニングが可能になります。こうした人体に関する知見を生かせば、増え続ける要介護者の数も、将来減らせるかもしれないのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

帝京大学 福岡医療技術学部 理学療法学科 講師 壇 順司 先生

帝京大学 福岡医療技術学部 理学療法学科 講師 壇 順司 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

理学療法学、解剖学、体表解剖学

先生が目指すSDGs

メッセージ

人の体を「触って理解し」、治療できるのは理学療法士だけといっても過言ではありません。理学療法士のように触って治療を行うことは、多職種ではあまり行わないからです。しかし人の体に触れながらの治療は、人体への深い理解が必要です。
人体の構造は大変複雑ですが、実に精巧で寸分の狂いもなく作られていて、それでいて機能的に配置されています。そんな人の体をしっかりと学べば、あなたは病で苦しむ人の治療者になれるでしょう。不思議というよりもむしろ神秘の世界に近い人の体について、ぜひ深く学んでほしいと思います。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

帝京大学に関心を持ったあなたは

帝京大学 福岡キャンパスは有明海に面した雄大な自然と最新設備が揃ったキャンパスです。理学療法、作業療法、看護、診療放射線、医療技術(救急救命・臨床工学)の5学科を擁する福岡医療技術学部では、現代の高度な医療に欠かせない知識や技術に加え、患者さんや他職種のスタッフへの想像力やコミュニケーション能力といったチーム医療に必要とされる素養を高めながら、大牟田市という歴史ある土地で官民一体となり、各自治体と連携しながらさまざまな取り組みを実施していくことで医療のプロとして地域に貢献できる人材を育成します。