骨や筋肉から、人の体を探っていく「理学療法」の世界
骨の形は、一人ひとり違う
人体は、理学療法や疾病にかかわる重要な部位として認識されているものだけで、200以上もの骨と、400以上もの筋肉からできています。そうした骨や筋肉、じん帯などが実に複雑に、寸分の狂いもなく精巧に組み上がって、人体は形作られています。
「体表解剖学」といって、皮膚の上から触れながら内部の構造や形、機能を理解しようとする学問もありますが、実際に解剖してみると、特に人の骨の形のバリエーションの豊かさに驚かされます。一人ひとり顔が異なるように、骨の形も異なるのです。その中でも似かよった骨をグループ分けすると、歩き方の違いや、起こしがちな怪我などがわかってきます。理学療法に解剖学的視点を入れると、こうした傾向が見えてくるのです。
骨が原因の可能性も!
靴の底を見ると外側、あるいは内側ばかりがすり減る人がいます。歩き方や歩行時の膝の向きなど、原因はいろいろと考えられますが、その一つに踵(かかと)の骨の形状があります。最初に接地する踵が、なんらかの影響を及ぼしている可能性があります。原因が踵の骨の形状なら、その人に合った歩き方や、転倒しやすい高齢者には転ばないコツといった、改善に向けた具体的な指示ができるかもしれません。
また、人体は骨だけでなく、筋肉や関節、さらにじん帯などから成り立っています。それらの形や付き方がわかれば、関節の骨の形状からその人本来の肩の可動域が判明します。なぜこの人は腕が回しづらいのかといった原因もわかってくるでしょう。じん帯も厚さが薄い人や、細い人などさまざまですから、じん帯とねんざとの相関関係も検証できます。
原因を解明し、確実なトレーニングを
確実な治療には、その根本となる原因を探り当てなければなりません。対症療法ではなく、疾病の本当の原因を明らかにすれば、より確実な結果に結びつくトレーニングが可能になります。こうした人体に関する知見を生かせば、増え続ける要介護者の数も、将来減らせるかもしれないのです。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
帝京大学 福岡医療技術学部 理学療法学科 講師 壇 順司 先生
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