飛行機の設計や形を大きく変える、炭素繊維複合材料とは?

飛行機の設計や形を大きく変える、炭素繊維複合材料とは?

日本がリードする炭素繊維複合材料

最近の飛行機では、アルミニウム合金などの金属に代わる素材として、炭素繊維複合材料の導入が進められています。炭素繊維複合材料は、炭素繊維をプラスチックで固めて作製しますが、非常に軽い上に、丈夫で疲労が起こりにくく、錆びないという特徴があるため、飛行機の素材に導入すると、強度面だけでなく、燃費や整備コストも大幅に改善できるというメリットがあります。この炭素繊維複合材料の生産技術では、日本のメーカーは世界を大きくリードしていて、世界シェアの7割を日本製のものが占め、現在も品質向上やコストダウンのための研究が進められています。

「異方性」という特性を持てる素材

一般的な金属は、どの方向に負荷がかかっても同じような特性を示す「等方性」の素材です。それに対して炭素繊維複合材料は、複数の薄いシートを重ね合わせて成形していく際に、炭素繊維の方向の組み合わせ方や切り出し方を調整することで、ある方向に対しては固いのに、別の方向に対しては柔軟な特性を示す「異方性」を持たせることができます。この「異方性」をうまく利用すると、例えば、金属では強度的に実現が難しかった特殊な形状の翼などを作ることが可能になります。

素材自体の性質を生かした新しい使い方とは?

飛行機向けの新しい素材として導入が進む炭素繊維複合材料ですが、現時点では従来の金属材料をそのまま置き換える形での利用が大半で、その性質そのものを生かした使い方をしているとは言えません。例えば、従来の飛行機はまず外側の部分を作ってから内部に梁(はり)を通して補強する構造ですが、それとはまったく違う、炭素繊維複合材料による縦、横、斜めの梁を組み合わせ、それに外板を付けていくグリッド構造(ラティス構造)にすると、素材のメリットを最大限に生かす形で設計を最適化・軽量化することが可能になります。
炭素繊維複合材料は、私たちが知っている飛行機の設計や形そのものを、大きく変えていく可能性を秘めているのです。

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東京大学 工学部 航空宇宙工学科 教授 青木 隆平 先生

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航空宇宙工学

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今の学生は、「余計なこと」をしたがらなくなったように思います。なにごとも過程を飛ばして、すぐに答えを知りたがる人が増えました。でも私は、「余計なこと」をしてほしいと思っています。それは決して無駄ではないのです。早急に結論だけを求めようとするのではなく、いろいろな勉強をして、いろいろなことを考えていれば、あらゆる方向に進む可能性が開けます。勉強の中での、一見無駄に思える「余計なこと」は、いつか必ず生きてくると思います。

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