海洋汚染を食い止める革新的な生分解性プラスチック
海を汚染するプラスチック
プラスチックゴミによる海洋汚染が深刻になっています。海表のゴミの80%、海底のゴミの90%近くがプラスチックで、30年後には世界の海の中にいる魚の総重量を、プラスチックゴミの総重量が上回るといわれています。また、プラスチックは安定なため、半永久的に残り続けます。それを魚が食べ、その魚を食べた人間の体に入るという問題も生じています。こうした問題を前に、現在日本が国を挙げて取り組んでいるのが、海の中で微生物によって分解される「生分解性プラスチック」の開発です。
海中で分解させる技術
生分解性プラスチックとは、微生物が持つ酵素によって分解され、なおかつ微生物が食べることができるプラスチックです。土壌や淡水の中で分解する生分解性プラスチックはすでに開発され使われていますが、海水の中は土や淡水に比べて微生物の数が少ないため、海中で分解することが非常に難しい点が課題です。
しかし2013年に、海洋プラスチックにある特徴を持った微生物群が付着することがわかりました。この現象を利用して、たくさんの微生物が集まりやすくする仕組みの研究が行われています。この技術は、近い将来、生分解性プラスチックに組み込まれ、海洋でのプラスチックの生分解が実用化される見込みです。
実用性と環境保護を兼ね備えた素材
研究のゴールはまだ先にあります。現在の技術では、生分解性プラスチックを使用している最中にその分解がはじまってしまうなど、分解するタイミングのコントロールが困難です。そこで、容器や袋として使っているうちは特性が保たれ、あるポイントで分解が進むようにするような研究が進められています。こうした技術を「スイッチング」と呼びます。これが実現すれば、実用性と環境保護への配慮を兼ね備えた夢のプラスチックが誕生するでしょう。
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先生情報 / 大学情報
群馬大学 理工学部 物質・環境類(食品工学プログラム) 教授 粕谷 健一 先生
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