イチゴが一年中収穫できる、夢の「植物工場」の秘密
クリスマスがイチゴの最需要期
イチゴには大きく分けて2種類あり、旬も違います。正月あたりから春までの一季成り性品種と、夏から秋までの四季成り性品種です。現在、一年の中で生食用の甘いイチゴの需要が多くなるのはクリスマスの時期です。もちろんケーキにもイチゴは欠かせません。
この時期が一番高くて多く売れるので、イチゴ農家はクリスマスを目標として生産したいのです。しかし、天候や気温の変化によっては、需要期に出荷できるとは限らないという、不安定要因があります。また、国内の夏から秋のイチゴの生産量は全体の約5%と少なく、この時期は輸入に頼っています。
植物工場で栽培する
そこで現在進行しているプロジェクトが完全人工光型植物工場です。室内でLEDの光を当てて、温度も調節しながらイチゴを栽培します。季節や自然環境に左右されることなくいつでも収穫できることが利点です。
また、きれいに赤く着色したイチゴは見栄えがよく、アントシアニンという機能性成分も多く含まれます。しかし、着色不良が起こると、商品価値が下がってしまいます。イチゴの着色のメカニズムを遺伝子レベルで研究した結果、青色LEDが着色を促進することがわかりました。太陽光は一方向から当たりますが、植物工場ではあらゆる角度から光を当てることができます。つまり、着色の問題は青色LEDをさまざまな方向から当てることで解決できる可能性があります。
ハチを使わない
イチゴの栽培において、通常はハチを使って受粉しますが、受粉しなくても結実することができるイチゴを開発する研究を行っています。受粉しなくていいのは大きなメリットがあります。植物工場内で大量のハチを使わなくていいからです。受粉用ハチの高騰や、工場で働く人がハチに刺されるなどの問題があり、植物工場ではハチを使わない方がコスト面と安全面においても優れているのです。
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先生情報 / 大学情報
徳島大学 生物資源産業学部 生物資源産業学科 准教授 宮脇 克行 先生
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