ドラッグデリバリーシステムとは? 医療が進歩する薬の使い方
薬を安全に効果的に投与する仕組みを作る
薬を効かせたいところに届ける仕組みを「ドラッグデリバリーシステム(DDS)」といいます。例えば、がんの治療に使う強い薬は副作用もあるため、病気のところだけで働き、それ以外への影響を少なくできるのが理想です。また、ぜんそくの薬であれば、明け方に発作が多いことを考慮しながら一日を通して血中濃度が保たれる投与方法が必要です。体内での薬の動きを調べて、安全で効果的な薬の投与を研究するのが薬剤学という学問です。
がんの場所を狙って薬を届ける
肝臓は消化管からの門脈と、心臓からの動脈という2つの経路から血液を受けています。肝臓にできるがん細胞は、主に動脈から血液を受けて活動しています。造影剤などに使われるリピオドールという油の一種は、動脈から投与すると肝臓がんのところで長くとどまる性質があることがわかっています。そこでリピオドールにがんの薬を含有させて肝臓の動脈から投与したところ、薬をがんに効果的に届けられて、肝臓のほかの部分では門脈からも血液を受けているため薬の影響を少なくできるとわかりました。そこで、足の動脈から肝臓の近くまでカテーテルを通して薬を投与する方法が実用化されています。
皮膚からの投与は薬剤学の夢のひとつ
薬が消化管で吸収されて肝臓で分解されることを「初回通過効果」といいます。ニトログリセリンという狭心症の薬は、口から飲んでも肝臓で分解されてしまい効果が得られません。そのため舌下に錠剤を入れることで、粘膜から吸収されて心臓に届きます。皮膚に貼るタイプの薬も、肝臓で薬が分解されるのを回避でき、投与が簡単で、投与していることが一目でわかるなどのメリットもあります。使い方の難しい薬を皮膚から投与するのは薬剤学の夢のひとつですが、薬の多くは分子が大きいために皮膚の角質層を通らず、限られた薬しか実用化されていません。そこで皮膚に一瞬だけ電気を流して小さな穴を開け、微弱な電流とともに薬を通す研究が進んでいます。
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