極小のものを計測する技術が、世界を変える!

極小のものを計測する技術が、世界を変える!

目に見えない小さな物体をなぞってとらえる

肉眼では見えない極小の物体を正確に計測する技術が研究されています。特殊な光であるレーザーを用いた顕微鏡で物体を計測し、その形状を3次元のCG画像で再現するのです。レーザー光の針の先端で物体の表面をなぞってサイズや形を計測するのですが、わずか原子100個程度の精度で測ることができるというから驚きです。このレーザー顕微鏡の中には、これまで計測が難しいとされた細胞の生きたままの様子を見ることができるものもあります。例えば、ゾウリムシの鞭毛(べんもう)の動きやDNA上を進む酵素なども観察できます。

がん細胞にだけ抗がん剤を届けるナノ医療に応用

レーザーを使った計測技術は、さまざまな分野への応用が期待されています。
医療分野では、DDS(ドラッグデリバリーシステム)という薬をがん細胞だけに送り込む治療法が世界中で研究されています。従来の抗がん剤は正常な細胞にまでダメージを与えてしまうため、光ファイバーの先端につけたナノサイズの抗がん剤微粒子でがん細胞にだけ薬を投与できるようにすれば、副作用を減らすことができるのです。レーザー計測技術はこのDDSで、がん細胞の大きさや抗がん剤が入ったナノサイズ微粒子の品質を調べるために不可欠です。

一生分の情報が指先サイズに収まるかも

レーザーを活用した未来の光メモリも開発されています。高分子でつくった直径約500ナノメートルの球にDNAのような構造を入れ、そこにレーザーを使って情報を書き込むことができるようにするもので、実現すればブルーレイやDVDディスクの数百倍の容量が実現できると世界から注目を集めています。極小のものを計測できる技術は、極小のものに情報を蓄える技術にもなるのです。光メモリなら、サーバに大量のデータを保存しても熱を出さないので機器の冷却装置がいらず、大きな節電効果も見込めます。人間の一生分のデータが、指の先ほどに収まる日がやってくるかもしれません。

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先生情報 / 大学情報

静岡大学 工学部 電気電子工学科 教授 江上 力 先生

静岡大学 工学部 電気電子工学科 教授 江上 力 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

情報光学、光工学

メッセージ

電気電子工学の分野は、電気・電子回路やモーター、太陽光・風力発電などにとどまらない、実は最先端の「情報光学」の分野でもあります。情報光学とは、光技術と情報処理技術が重なる分野で、極小のものを見たり大容量の情報を高速で処理したりできる現代社会に不可欠な技術です。バイオテクノロジーや医療とも密接に関わり、将来私たちの生活が一変する可能性を秘めています。この分野では、物理をはじめ宇宙や化学、生物など多方面の学びが役立ちますから、ぜひいろいろなものに興味を持つようにしてください。

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静岡大学は、7学部を擁する総合大学のメリットを生かし、学生の知的探究心に応えることができる幅広い学問領域の教育を実施しています。大学の理念は「自由啓発・未来創成」であり、これは自由によってこそ自己啓発を可能にし、それを通じて、平和かつ幸福な未来を創り出すとの力強い思いを表明しています。
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