薬はどのように体の中を運ばれていくか

薬はどのように体の中を運ばれていくか

DDS:Drug Delivery System

ドラッグデリバリーシステムとは、薬を、目標とする患部(臓器や組織、細胞、病原体など)に、効果的に送り届けるシステムのことです。すべての細胞は、その生命活動を維持するために、必要な物質を細胞内に取り込み、不要な代謝産物を細胞外へと排出する機能を持っています。この仕組みを理解し、利用することで薬の効果をあげることができます。

動きを支配する因子、トランスポーター

トランスポーターとは、細胞膜に存在する膜タンパク質です。一つ一つの細胞は、脂質二重膜である細胞膜で覆われているので、脂溶性の低分子物質は細胞膜を簡単に通過できるのですが、水に溶けやすい水溶性の物質は、何か仕組みがないと通過できません。例えばエネルギーになるグルコース、アミノ酸といった物質は水溶性なので、そのままでは細胞膜を通ることができません。これでは、せっかく摂取した栄養が細胞の中に入ることができないのですが、トランスポーターが取り込んでくれるのです。その一方、トランスポーターには細胞内から不要な物質を運び出すという働きもあります。例えば、抗がん剤が効かなくなってくるという症状を聞くことがあると思いますが、ひとつの原因としてがん細胞の中に薬が入っても、それを再び外へ運び出してしまうトランスポーターの存在があげられます。このトランスポーターがせっせと薬を運び出してしまうので、薬が効かなくなってしまうのです。

大きな分子を取り込む仕組み、レセプター

トランスポーターには大きな分子を運ぶことができないという限界があります。例えばタンパク質を運ぶことはできません。タンパク質を運ぶ際は、レセプター(受容体)という仕組みが関係してきます。タンパク質のような大きな細胞外物質(リガンド)は細胞膜上のレセプターに結合することにより、エンドサイトーシスという物質を取り込む過程が働き始め、細胞膜が落ちくぼんでその物質を包み込んで、取り込んでいます。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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広島大学 薬学部  教授 高野 幹久 先生

広島大学 薬学部 教授 高野 幹久 先生

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薬学系

メッセージ

いろいろなことに興味を持って、自分で納得できるまで考えることが大事です。研究というものは高校までの教育と違って、答えが用意されているわけではないので、得られた実験結果のデータから論理的に考えて、何が一番妥当かという結論を導き出さなければなりません。研究はこれまで世界に答えのないものを自分たちで見つけていく作業なので、どういう研究を行い、どういう結論が出たら、どう解釈するのか、論理的な見方、考え方を身につけてください。

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