医療を支える臨床検査で微生物の個性を見極めろ!
誰もが持つありふれた菌が突然牙をむく
医療現場で扱う微生物といえば、コレラ菌や結核菌などを思い浮かべますが、衛生状態のよい日本でこのような菌を見かけることは少なくなりました。しかし、ありふれた菌が時として牙をむくことがあります。かつて大腸菌は病気を起こさないと思われていましたが、1996年、大腸菌の一種であるO157に約1万人が感染しました。また、皮膚表面にいる黄色ブドウ球菌が、指先の化膿で増えて食中毒を起こしたり、肺炎や敗血症を起こすこともあります。健康レベルが下がった時などに、誰もが持っていて、いつもは無害な菌が突如として死に至る病を引き起こすことがあるのです。
微生物の個性を見極める
菌について調べるのが臨床検査です。臨床検査技師は、血液や尿の分析をはじめ、ウイルスやがん細胞の検査などで医療現場を支えています。検査技師には検査ノウハウはもちろん、医療知識と経験、そして研ぎ澄まされた勘が必要です。というのも、検査の目的や背景を理解することで医師の予見と異なるものを発見して伝えることで、治療方針や薬が変わることもあるからです。機械は「大腸菌がいます」などの分析はできますが、それが病気の原因なのか、また菌の個性を見極めて「この症状ならこの菌が問題では?」「この菌なら別の抗菌薬にするべき」とデータを読み解くのは熟練した技師の仕事です。
地球規模で健康に配慮する「ワンヘルス」
1928年にペニシリンが発見され、人類は微生物との闘いに勝利宣言しました。しかし、菌は小さくても生き物です。抗生物質に打ち勝とうと進化する過程で菌の耐性化が進み、いたちごっこが繰り広げられてきました。実は抗生物質は、人間の治療だけでなく一次産業でも感染症予防や発育促進のために使われています。動物などを通して抗生物質が環境に出ていくことで、野原や海の微生物が耐性を強め、人間に感染した際に薬が効きにくくなっていくことが世界的に懸念されています。人も動物も環境も健康に、という「ワンヘルス」の考え方が求められています。
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先生情報 / 大学情報
神戸学院大学 栄養学部 栄養学科 講師 松田 広一 先生
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