誰でも手軽に作れる「世界に一つの発光素子」をめざして
光を自分で作れたら?
私たちは当たり前に光を利用し、光と共に生活しています。実用だけでなく、夜景やイルミネーションを見てワクワクするなど、光は感動を生み出すものでもあります。現在、光源として利用されているのは、太陽光、LEDや蛍光灯、液晶や有機ELなどですが、どれも個人が手軽に作れるものではありません。もし、誰もが簡単に光を作り出し、操るようになれば、また違った新しい未来を自分たちで創造できるでしょう。
自分で描いた絵を光に変える
手軽に光を作る方法として、「電気化学発光素子」があります。酸化還元反応を利用して、材料そのものを光らせるものです。具体的には、有機物の粉末を溶液に溶かして、電圧をかけて光らせます。この素子は、溶液と電極付きの2枚のガラス基板とそれを止める目玉クリップだけで作ることができます。溶液を変えれば色を変えられ、絵を描いた薄い膜を基板の間に挟むことで、その絵の形に光らせることも可能です。この薄い膜は、コンピュータで描いた絵をラベルに印刷し、フォトレジストという装置を使って感光させて作ります。半導体の製作技術を活用して、基板にごく細い線を複数描き、それぞれの線の間に異なる溶液を流すことにより、1枚の基板で異なる色の光を光らせる技術も開発されています。
より強く長く光らせるために
電気化学発光素子を使えば簡単に光を作ることができますが、現段階では、その光は弱く、寿命も短いものです。そこで、より強く長く光らせるための研究が進められています。例えば、2種類の有機物を混ぜて酸化と還元のバランスを整えることで、従来よりも強い光が得られるようになりました。さらに強く長く光らせることができれば、次世代ディスプレイをはじめ、産業においても多様な活用の道が開けます。
電気化学発光素子の構造はシンプルで、発光原理も単純に見えますが、基礎研究のレベルで解明すべきこともたくさん残されています。開拓すべき未知の世界が広がっているのです。
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先生情報 / 大学情報
法政大学 理工学部 電気電子工学科 准教授 笠原 崇史 先生
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