心の病以外の場でも活用できる臨床心理学
日本発の「森田療法」とは?
心理療法や精神療法の多くは西洋から入ってきたものですが、日本で生まれた療法として、主に神経症を対象とした「森田療法」があります。西洋の心理療法は、心に何か問題や欠点があってそれを治すという、西洋医学的な考え方に基づいています。それに対し森田療法は、「不安とは人がより良く生きたいと思う欲求の裏返しであり、人が生きている限り避けられない受容すべきもの」ととらえます。つまり、不安を健康で自然な感情として受けとめ、付き合っていきながら、本来の欲求をうまく発揮できるようにしていくのです。森田療法の考え方は日本人的発想に近いため、日本では受け入れられやすく、いろいろな方面から注目を浴びています。
現代社会の問題と臨床心理学
現在、うつ病が慢性化している人が多くなっています。うつ病になりやすい人には頑張り屋の人が多く、期待に応えたいと思うあまり疲弊(ひへい)してしまうのです。臨床心理士はその頑張りを認めつつ、空回りしている部分を修正していきます。
また、いじめの問題は、現在の子どもたちに兄弟姉妹が少なく、親がすぐ助け船を出すのでさまざまな感情を味わったり、傷つく経験がないうえに相手の痛みも想像できないため、エスカレートしてしまうと考えられます。さらに、テストの点数や入試など数字の評価を突きつけられ、息苦しくなってしまうことも原因でしょう。でも、点数だけでは測れないその子の良いところを見つけ、存在を認めるところから臨床心理士の仕事が始まるのです。
病気の抑止や幅広い分野での活用も
臨床心理士は、心の病の治療だけが仕事ではありません。病院に行くほどではないけれど悩んでいる人のために、スクールカウンセリングや会社の産業カウンセリング、あるいは出産前後の育児相談などの形で、病の前の段階で抑止することも大事です。また、身体の症状の背後に心理的な問題がうかがわれるケースをサポートしたり、患者の死の不安を和らげるためのケアを行ったりと、臨床心理学の幅広いニーズが認められています。
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先生情報 / 大学情報
法政大学 現代福祉学部 臨床心理学科 教授 久保田 幹子 先生
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