コンピュータの力を借りて、高効率なモータを実現する。

コンピュータの力を借りて、高効率なモータを実現する。

電力消費の約半分を占めるモータ

モータは、電気自動車や各種電化製品など、さまざまな製品に組み込まれています。日本国内の電力消費量の約6割、世界の電力消費量でも約4割がモータを駆動させるための電力です。モータの駆動効率が数ポイント改善されると、原子力発電所2~3基分の電力の節約になるとも言われていて、効率化のための研究が今も世界各国で活発に続けられています。

磁束をとらえることの難しさ

モータは、電気的なエネルギーを、磁束(磁気エネルギー)を介して機械的なエネルギーに変換する装置です。その仕組み上、エネルギーが変換される際には必ず損失が発生します。モータの技術自体は古くからあるもので、エネルギーの損失を最小限に抑えて効率化を図る技術研究も絶え間なく続けられてきました。それでも、まだ解明できていない部分が多く残されています。
そもそも、磁束(磁界の強さと方向)は目に見えず、計測も非常にしづらいものです。加えて、鉄と銅の塊を回転させるモータのような装置では、より力強く回るように磁束を強めても、それ以上磁化が変化しなくなる「磁気飽和」が発生します。その場合、磁束が非線形の(力と作用が比例関係にない)変化をするようになるため、数式だけでは解けない要素が非常に多いのです。

精度と解析のバランスが必要

そこで最近のモータの研究では、コンピュータでのシミュレーションによる電磁界解析技術が用いられています。コンピュータ上で作成したモータのモデルを、メッシュと呼ばれる区画で細かく区切って、それぞれのメッシュでの磁束の変化などをシミュレートしていくというものです。メッシュの区切り方によって、コンピュータにかかる負荷や精度のバラつきなどに差が出てくるため、実際の研究においては、どのような設定を組んでシミュレートしていくか、精度と解析のバランスが求められます。古くからあるにもかかわらず、いまだに未知の領域に満ちているモータの技術革新は、これからの社会を変えていく要素の一つになるかもしれません。

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東海大学 工学部 電気電子工学科 准教授 大口 英樹 先生

東海大学 工学部 電気電子工学科 准教授 大口 英樹 先生

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電気電子工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私は進学先を選ぶ時、将来就きたい仕事を意識して、電気系の大学に進学しました。東海大学にも、卒業後の進路と目標を意識して入学してくる学生もいて、授業への取り組みや試験の成績も優秀です。
でも、「何がやりたいのかよくわからない」まま大学に入るのも、悪くはないと私は思います。大学時代を「何をやりたいのかを探す時間」にしてもいいのです。電気電子工学の分野は非常に幅広いので、最初のきっかけとして受験して、実際にいろいろ学んでいく中で、自分の道を探せばいいと思います。

先生への質問

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