植物が快適であるかどうかが、電気でわかる!?
植物の訴えを聞く研究
植物が生長するのに必要な仕組みとして、「光合成」があります。通常、強い光を当てれば、光合成はより活発に行われますが、当てすぎると植物が弱ってしまうこともあります。
植物に電極をつけ、生体内に生じている電圧を計測すると、さまざまな外的刺激に応じて電位が変化することがわかっています。これを「生体電位」と呼びます。生体電位を詳細に調べれば、光の強さや光を当てるタイミングなど、植物が快適に感じる環境を提供することができます。脳波や心電図で人間の健康状態を調べるのと同じようなものとイメージしてください。つまり、この研究によって植物が「栄養が足りない」とか「光がまぶしすぎる」などと訴える声を聞くことができるというわけです。
植物工場への応用
近年、農業の分野で注目されている技術に、「植物工場」があります。野菜や果物を人工的に環境制御された屋内で生産するシステムです。LEDなどを使って人工的に光を当て、完全管理の下に植物を育てるのですが、こうした環境で生体電位を観測すれば、植物の置かれる環境を、リアルタイムで自動的に調整することも可能になります。つまり、植物の刺激に対する反応をセンサーとして利用し、植物自身が環境を調整するような仕組みを作るのです。
植物工場は、レタスなど葉物野菜に関しては採算が取れる生産性を実現していますが、トマトやイチゴなど果実類については管理が難しく、まだ課題が多い状況です。そこに生体電位の計測システムを応用すれば、栽培の効率化が可能になり、より安全でおいしい植物を生産できるようになると期待されています。
どんな環境が最適なのか
研究の主眼となるのは、植物にとって快適な環境を調べることです。ただ、おいしい野菜を収穫するために必要となるのは、単に植物にとっての快適さだけとは限りません。例えば果物の場合、寒さなど適度なストレスを与えることで甘くなります。快適さとストレスのバランスをどうするのが最適なのかということも、重要な研究テーマの一つです。
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先生情報 / 大学情報
埼玉大学 工学部 電気電子物理工学科 准教授 長谷川 有貴 先生
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