思春期の心の病を予防するには? ロールシャッハテストで早期発見

思春期の心の病を予防するには? ロールシャッハテストで早期発見

心の病を予防したい

思春期や青年期は、統合失調症をはじめとする精神疾患を発症しやすい時期です。統合失調症を発症すると、幻覚や妄想などさまざまな症状が起こるため、周囲と話がかみ合わずに悩んだり、生活に支障が出たりします。もし発症前に予防できれば、病状が悪化する前に多くの人を救えるはずです。

統合失調症を見極める心理検査

統合失調症を発症する前の段階として、精神病発症危機状態(ARMS : At Risk Mental State)が提唱されています。すべてのARMSが統合失調症を発症するわけではないものの、発症リスクが高い状態です。この段階で適切な対処ができれば発症を予防できるものとして、ARMSについての研究が始まりました。
ARMSの評価は主に患者との面接で行いますが、誰もが症状をうまく言語化できるわけではありません。客観的な検査手法として、「ロールシャッハテスト」が挙げられます。インクのしみを用いた抽象的な図を10枚見せて、何に見えるのかを問う検査です。回答を分析すると、検査を受けた人のものの見方などがわかります。

ロールシャッハテストを予防に役立てる

ロールシャッハテストは、統合失調症の鑑別に有用な心理検査です。物事を被害的にとらえる、判断力の低下、などの認知のゆがみが見られると、統合失調症の可能性が高いと判断されます。ARMSの段階から早期に治療的なかかわりを行うため、健康な人、ARMSの人、統合失調症の人のロールシャッハテストの特徴の分析が進んでいます。その中で、症状が進むにつれて認知のゆがみの程度が大きくなることがわかってきました。ARMSの場合、微細な認知のゆがみはあるものの、統合失調症の人よりは程度が低い傾向が見られます。微細な認知のゆがみを発見することが予防のポイントと考えられるため、認知機能に着目した検査精度の向上を目指した研究が続いています。さらには認知行動療法などを用いて、ARMSの人がより健康な生活を送れるようにサポートをすることが望まれます。

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大阪国際大学 人間科学部 人間健康科学科 准教授 岸本 直子 先生

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私が取り組んでいる臨床心理学は、ものの見方を学んだり、目には見えない人の心について探究する学問です。自分自身を知るきっかけにもなりますし、周りの人を理解する手がかりにもなるので、よい人間関係を築くことにも役立ちます。ビジネス社会を見据えて、大学で関心を持って学んでもらえたら嬉しいです。大学での4年間は、社会に出る一歩前に位置づけられた貴重な時間です。心理学の勉強はもちろん、部活動、アルバイトなど大学生の間にしかできないさまざまなことにチャレンジして、人生の糧となるものを見つけてもらいたいです。

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